小児の鉄不足の実態 脳神経外科おたる港南クリニック

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小児の鉄不足の実態

 自分の35年間にわたる脳神経外科医としての経験の中で、小児の採血結果を見るということはほとんどありませんでした。大学や大きな病院に勤務していた時にはたまにありましたが、現在の診療所を始めてからはほぼゼロです。自分が鉄不足に注目するようになったのはオーソモレキュラー栄養療法を始めた3年ほど前からです。それまでは一般診療医としての視野しかありませんでしたので、小児の鉄欠乏など注目したことがありませんでした。
 
最近、「フェリチン鉄」というサプリメント(レピールまめ鉄)が出てきました。天然の食材のみを使ったサプリメント、というよりは食品です。貯蔵鉄である「フェリチン」が直接、腸管粘膜細胞からエンドサイトーシスという吸収機構を使って、細胞中にそのまま取り込まれるため、他の鉄サプリメントと比較して、活性酸素の発生が少ないため、消化管粘膜障害が少なく、吸収率もヘム鉄と同等以上とのことです。潜在性鉄欠乏症を重点対象疾患として扱っている自分としては大変興味を持ちました。そこで、このサプリメントを販売している「レピールオーガニックス(https://lepeelorganics.jp/)」様と共同研究を行うことにしました。

鉄サプリメントの評価は以下2点です。

  • 「フェリチン鉄」は吸収されにくい鉄を効率的に吸収させ、鉄不足を解消できるのか?「ヘム鉄」と比較してその吸収効率はどうなのか?
  • アミノ酸キレート鉄(ブログ:アミノ酸キレート鉄の弊害)のようにサプリメントの使用により、鉄過剰にならないか?

 以上を評価したいと考えています。まずは小児の鉄不足の実態を見てみようと当院職員の家族に協力してもらい、採血し、鉄を評価してみました。小児の採血ということで、うまく協力してもらえるかと不安でしたが、意外とすんなり採らせてくれました(笑)。結果は以下の通りです(表1)。

 対象は6~11歳の男子4名、女子2名(月経無)の6名です。職員のご子女5名、患者1名です。いずれも鉄不足を疑うような精神症状は著明ではなく、ほぼ健康で通常の日常生活を送っています。しかしながら、各項目の平均値は、Hb=12.8g/dL(正常14.0以上)、フェリチン=20.4ng/mL(正常100以上)、MCV(平均赤血球容積:鉄不足の指標)=88.0fL(正常92以上)と全ての参加者の鉄不足は深刻でした。「末武式 小児用鉄欠乏スコア」は1.7点(30点満点)とほぼ症状が無いお子様ばかりです。同時にビタミンD血中濃度も21.3ng/mL(正常30.0以上)と著明な不足状態でした(ブログ:ビタミンDと鉄)(ブログ:北海道民のビタミンD血中濃度)。症例6は小生の勧めで2か月前からビタミンDサプリメントを摂取しているお子様です。

 このように、とんでもない極度の鉄不足+ビタミンD不足ばかり(驚)。これでは小児の健康や正常な発達、安定した精神状態など保てませんよ。ほぼ健康と思えるような子供ですらこんな鉄不足です。この場合も意外に鉄を補充してみると何かが改善し、その症状は鉄不足のせいであったのかと思うのかもしれません。いわゆる発達障害と診断され、あるいはそこまでは至らずとも精神症状を呈するお子様の場合はどうなのかと考えると恐ろしい。日本という国は何故、こんなことを放置しているのでしょうか?鉄の不足によって、お子様たちに多くの体調不良が生じてくることは明らかなのに、それをチェックし、補充すること無しに、症状だけを診て「発達障害」と診断する。医者の意識が乏しい、あるいはちょっと気づいたとしても、保険診療内では治療する手段が無い。それが現在の保険診療の現実です。だから、自分で気づいて、自己責任で対応しなければならないのです。そのお手伝いをすることができるのが「オーソモレキュラー栄養療法」なのです。小生の話を聞いて、思い当たることがあるお母様方は、是非一度、親子でのオーソモレキュラー栄養療法外来を受診することをお勧めいたします!

 「フェリチン鉄」を含むこのサプリメントは、元々体内には存在することのないアミノ酸キレート鉄のように化学合成したものではなく、天然素材の単なる食品です。直感的には鉄過剰にはならない安全なものであると思っていますが、引き続き自分なりに検証していきたいと思っています。