日本人の深刻な鉄欠乏 脳神経外科おたる港南クリニック

〒047-0003 北海道小樽市真栄1丁目6番1号

0134-65-7725

ブログ

日本人の深刻な鉄欠乏

 日本人、特に有経女性や小児の鉄不足は深刻です。意識的に対応していない有経女性のほぼ100%が鉄不足です。これは日本人特有の問題です。
 では、飽食の時代と言われる現代において、なぜ、このような鉄不足がはびこっているのでしょうか?それは日本人の食生活が数十年前とは大きく変化しているからです。おそらく、おばあちゃんの世代ではこういった状況ではなかった筈です。理由はいくつか挙げられます。
◆鉄供給源の食品の摂取不足
 ★加工食品に頼ることが多くなった。
  素材から料理して食事することが減ったため、本来は素材に含まれていた栄養素が加工することで削ぎ落された。
 ★鉄の含有量の多いレバー、鯨肉、羊肉の摂取が減少した。
 ★調理器具が変化した。 
 ひじきには鉄が多く含まれていると言われています。しかし、昔に比べ現在のひじきに鉄は約9分の1程度しか含まれていないようです。これはひじきを調理する時の鍋の違いだそうです。昔は鉄鍋を使用していたものが、現在は利便性を追求して、ステンレス製の鍋を使っているからだそうです。またひじき加工時の加熱時間の違いも大きく影響するようです。同様に切り干し大根は鉄製の包丁に変わってステンレス製包丁が使われるようになって、鉄含有量が大幅に減ったようです。このように使用する調理器具の違いで食品の鉄含有量が大きく変化したのです。「日本食品標準成分表」における新旧データを比較して、鉄の含有量が多い「ほうれん草」の鉄含有量が極端に減少しているという話も聞きますが、分析法が変わったことが影響しており、こちらも単純には比較できないようです(ほうれん草の鉄含有量の変化)。
◆鉄不足を解消させるための政策を行っていない。
 18世紀頃から得体のしれない謎の病気が世界各地で発生しました。皮膚に日光過敏症が生じ、その後に下痢などの消化器症状が出現し、やがて、疲労や不眠が顕著になり、更には錯乱や幻覚、認知症が出現し、最終的には死に至るという「ペラグラ」という疾患です。1926年にアメリカの医学者ジョセフ・ゴールドバーガーによって、「ペラグラ」はビタミンB3不足による栄養失調であることが解明されました。同様に鉄欠乏性貧血も頻発し、1942年にアメリカ政府は、国内で流通する全ての小麦粉にビタミンB、鉄を加えることを義務付けました。それにより、ペラグラで亡くなる人はいなくなり、鉄欠乏性貧血も激減しました。アメリカ以外の国でも、国策として様々な食品に鉄を添加しています。ところが日本政府は何も対策をとっていないため、日本人の鉄不足は深刻なのです。

 鉄不足の母親から生まれてきた子供は、生まれた時点から鉄不足となります。その後も鉄不足の母親の母乳には鉄は少なく、離乳食に十分な鉄が含まれていないと、更に鉄不足は進行します。子供が成長するにつれ、身体は大きくなるので、相対的な鉄不足は更に進行します。お金をたくさん持っているお母さんは子供に十分なお年玉をあげることができます。しかし、お金に苦しんでいるお母さんは子供に十分なお年玉をあげることができません。こんなことが起きているのです。そして、女性は小学校高学年~中学生になると月経が始まります。一般的に健康な女性が1回の月経で失われる鉄は30mgです。成人では鉄の必要量は1mg/日です。有経女性では2mg/日と倍量必要なのです。そうするとお小遣いは倍量必要になります。成長と共に子供は少しずつお小遣いを増やして欲しいですよね。家計が苦しい家庭ではなかなかそうもいきません。中学校や高校で朝礼の時に気を失う女学生って、クラスに必ずいますよね。あれが極端な鉄欠乏の症状なのです。中学生以降に学校の成績がズルズルと低下して、男子学生に抜かれてくる女子学生っていますよね。その大きな原因の一つです。「成績が下がってきたから、学習塾に通わせよう!」ではなく、「成績が下がる前に鉄不足をチェックしよう!」が妥当なのです。周りで、氷が好きでガリガリ食べまくる女性はいませんか?これは鉄欠乏が進行して、ヘモグロビンが12.0ng/ml未満の鉄欠乏性貧血に至ってしまった場合に特徴的に現れる症状です。そして、有経女性の鉄不足は50歳を過ぎて、閉経するまで持続します。女性として、輝かしい時期に鉄不足の症状はずっとついて回るのです。彼氏とデートする予定の当日に、頭痛やめまいがあって調子悪いとか、家族で動物園に出かけようと予定している時に、お母さんが頭痛やめまいがして具合悪いという経験がある方はいらっしゃいませんか?そして、閉経後に鉄不足は改善されて、「若い頃、あんなに頭痛やめまいに悩まされたのに、すっかり無くなった。」となるのです。男の子の場合は喪失する鉄は少ないので、鉄不足は年齢と共に次第に回復していきます。しかし、25歳位までは鉄不足が継続するようです。10歳代後半~20歳代前半の男性にも鉄不足は存在しています。スポーツしている中高校生や若年男性でも、鉄不足があると瞬発力や持久力に大きな影響を与えます。これを整えること無しに上は目指せません。技術や戦略をどんなに磨いてもトップなんて目指せないのですよ。ところが大半の人は技術の向上はもちろんのこと、やみくもに体力を鍛え、根性論だけで臨みます。万全の体調なんてあまり気にしていないのですよ。世界トップレベルを目指すのであればこんなことは必要条件です。
 話を女性に戻しますが、一度の妊娠+出産でフェリチンは約50ng/mlに相当する鉄が子供に移行します。そうするとお母さんの鉄不足は更に進行します。「産後うつ」は産後にお母さんの鉄不足が極端に進行することも大きな原因です。なけなしのお金を子供にあげてしまったので、お母さんは更に苦しくなってしまうってことです。鉄不足は不妊や流産の原因にもなるようです。更に育児期の母親にも変化が起きてきます。鉄不足があるとドーパミン、セロトニン、GABAという神経伝達物質が減少します。そうすると母親はイライラして、キレやすくなり、子供を叱りつけてしまうのです。それにより母親は自責の念にかられて、落ち込んでしまいます。こうなると子供は委縮してしまい、怯えながら生活することになり、不登校やドモリやチックなどの症状を呈することになり、自閉症スペクトラム症(ASD)・注意欠如・多動症(ADHD)・限局性学習症(SLD)などの「発達障害」と診断される場合が出てくるのです。このような発達障害児のほとんどは例外無く、鉄欠乏です。鉄欠乏を改善しても症状が残存することで、初めて「発達障害」という診断がつくのではないかと思いますが、現実は小児科医や心療内科医は症状のみで判断して医薬品を処方するのです。残念ながら、それが現実です。
 このように現代社会にはびこる鉄不足は世代を超えて連鎖し、更に悪化していくのです。つまり、お子様の不調の原因はお母さん自身、気が付いていない鉄不足に関係がある可能性があるのです。以下のチェックをしてみて下さい。該当する項目が多いほどお子様は鉄不足です。

 この話を聞いて、思い当たる節のあるお母様は是非、親子共々、オーソモレキュラー栄養療法外来での採血、治療をお勧めします。今、感じているお子様の精神症状や自分が気づいていないお母様のお悩みを解決できるかもしれないですよ。我が国、日本ではいまだにこういった状況を回避するための政策を打ち出す政治家はいません。ですから、現時点では自己責任で対応しなければならないのです。
 若い女性で、時々献血をしている方がいらっしゃいます。日本赤十字社には申し訳ありませんが、25歳以下の全ての方と有経女性の献血は避けるべきであると思います。自分が充足されていないのに、他人に献上している場合ではありませんよ。鉄不足にある若い女性が献血をすると、鉄サプリメントを摂取しても、元のレベルに回復するには年単位の期間が必要になるのです。
 日本人有経女性の皆様、未来あるお子様のご健康を心よりお祈り申し上げます!