アミノ酸キレート鉄の弊害 脳神経外科おたる港南クリニック

〒047-0003 北海道小樽市真栄1丁目6番1号

0134-65-7725

ブログ

アミノ酸キレート鉄の弊害

鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄があります。詳しくは前回にお話ししたように、腸管上皮細胞で別々の経路で吸収されて、鉄は体内に分布していきます。鉄は人の身体では閉鎖回路になっており、過剰な鉄を排出する機構はありません。約1mgの鉄が食物より吸収されて、約1mgの鉄が糞便や尿、汗、皮膚や粘膜の細胞剥離により喪失し、バランスをとっています。体内に鉄が充足されると腸管上皮細胞に吸収され、貯蔵されていた鉄は血中に移行せず、粘膜細胞自体を剥離することによって、体内に鉄が過剰になることを防止しています。

ところが海外製の鉄サプリメントに上図のような「アミノ酸キレート鉄」という製品があり、このサプリメントは本来の鉄吸収経路ではない形で体内に吸収されるしくみになっています。アミノ酸キレート鉄とは「グリシン」というアミノ酸が2分子でFe2+(2価鉄イオン)がキレート結合しているもので、「ビスグリシン鉄」と呼ばれています。これは天然には存在しない形の鉄で、化学的に合成されたものです。日本では食品として認められておりません。しかしながら、現状、インターネットで海外から容易に購入することができるようになっています。また、アミノ酸キレート鉄を推奨している医師が書いたベストセラー本があるので一般の人にも注目されるようになってきました。

前稿でもお話ししたように、鉄には厳密な制御機構があり、吸収時には過剰にならないように調整されているのですが、このアミノ酸キレート鉄は本来の鉄吸収経路である「HCP-1」と「DMT-1」を介した吸収経路ではなく、アミノ酸である「グリシン」の吸収経路であるLAT(Large neutral amino acid transporter)を利用して、体内に吸収されるのです。そうなると体内で鉄は過剰になります。余剰の鉄はフェリチンやヘモジデリンに貯蔵隔離されますが、更に過剰になるとタンパク質に結合していない自由鉄を生じ、それが活性酸素を発生させて、炎症を惹起し、細胞を障害することになります。特に肝機能においては、肝炎ばかりでなく、場合によっては肝硬変や肝癌を惹起する危険性があります。あるいは心機能障害から心不全を引き起こすこともあります。実際にこのような副作用を生じている症例を少なからず認めています。鉄は閉鎖的な代謝経路であることから、一度過剰に蓄積されると、排出されるまでにもかなり時間がかかってしまいます。鉄のサプリメントはそれなりの知識がないと重大な副作用を生じることになります。従って、以上のことを理解しているオーソモレキュラー栄養療法を実践している医師の指導の下に行うことが望ましいと思います。中途半端で安易な知識で実践することは避けるべきです。今一度、ご認識下さいますようお願いいたします。

鉄医療用サプリメントをご希望の方は「サプリメント申込みフォーム」よりご連絡ください。