慢性頭痛でお悩みの方、現状の治療方法は、根本的な解決ではなく、とりあえずの「痛み止め」、つまりは対症療法治療であることがほとんどです。今回のブログで自分はその状況に一石を投じます。
まず、自分を含めた周りの脳神経外科医が行っている頭痛の診断方法の流れについて説明します。頭痛を訴える患者様が来院されたらまず頭部MRIを施行し、出血や腫瘍などの器質疾患が無いかどうかを確認し、異常が無ければ、その他に目、鼻、耳、歯由来のものや中年以降の方であれば高血圧の有無もチェックします。 その後に、頭痛の性質や患者背景を考慮して、まずは「片頭痛」であるかどうかを考えます。それが否定されれば次に「緊張型頭痛」や「その他の頭痛」を考えて必要な薬を処方し、経過観察をします。これでほとんどの患者様はほぼケリがつくのですよね。脳神経外科や脳神経内科の中でも頭痛を専門的に診療している医師以外(ほぼ95%以上の脳神経外科医)はこのパターンだと思います。頭痛の診断は頭部MRIやCTで除外診断を行った後は問診によってのみ鑑別するので、その確定診断をする検査が他に無いのです。自分の脳神経外科医としてのキャリアは今年で37年目になりますが、この流れは大きく変わりません。
1997年に北里大学医学部・内科が行った「日本における片頭痛の有病率」の全国調査によると、慢性頭痛の有病率は約40%で、そのうち緊張型頭痛は22.3%、片頭痛は8.4%で、合計は30.7%になり、慢性頭痛を訴える人の77.5%はこのどちらかになるということになります。
【Prevalence of migraine in Japan : a nationwide survey.】Sakai F.,et al. Cephalalgia 1997; 17(1):15-22.
国際頭痛分類(ICD-3)には300種類の頭痛が分類されており、頭痛を専門的に勉強している医師は緊張型頭痛や片頭痛以外の頭痛の原因を一つずつ考えていきますが、頻度が多くない原因を突き詰めていくので労力を使います。そうすることで、三叉神経痛や帯状疱疹などの神経痛、群発頭痛などの病気が見つかることもありますが、原因が不明のままの場合は、消炎鎮痛剤を処方し多少の生活指導をするという、結局は対症療法として同じ対応をすることになります。これが日本の一般的な現場医療における流れです。
自分が一石を投じる部分は、若い方の頭痛の原因である二つの要因です。自分はこれらが思った以上に慢性頭痛の大きな原因になっていると思いますが、専門医にはその認識がありません。これらを解消することで、現代社会における若者の慢性頭痛を根本的に解消できると考えております!
①鉄不足による頭痛(特に有経女性や小児)
②スマホチャージache ®(スマートフォン使用者)
国際頭痛分類(ICD-3)を何度も繰り返し見ても、これらの頭痛がどこかに分類されているのかわかりません。「14.1 分類不能の頭痛」になるのでしょうか?つまり、全く認識されていないのです。
自分はこの二つの理由による頭痛はかなりの高頻度で存在すると思っております。鉄不足による頭痛はオーソモレキュラー栄養療法の中ではほぼ常識的に認識されていて、それを改善することにより、頭痛が改善する事実も確認していますし、鉄不足からくる頭痛が分類されていない一つの原因として、保険診療では「潜在性鉄欠乏症」(ブログ:隠れ貧血(潜在性鉄欠乏症))を病気と認識していないからです。保険治療は、ヘモグロビン値が極端に低下して、「鉄欠乏性貧血」と診断できて初めてできるものなので、そこまでヘモグロビン値が低下していなくとも、栄養障害である潜在性鉄欠乏症の状態で症状が出現するという認識が世の中には無いわけです。仮に認識したとしても保険診療のルール上、潜在性鉄欠乏症の状態では医薬品の鉄剤は使用することができないのです。
更に、前稿(ブログ:血液検査の基準値)でお話ししたように血液検査の結果の横に書いてある「基準値」というのが曲者で、これは必ずしも健康な方の値ではないこともあります。ですから、一般の保険診療医はその範囲内におさまっていることで、異常と認識しないことがあるわけです。その代表例が女性の「フェリチン」で、当院の検査センターでのフェリチンの基準値は「女性:5~157ng/mL」と記載されています。しかし、オーソモレキュラー栄養療法における臨床判断値は80ng/mL以上と考えられています。このズレが保険診療医とオーソモレキュラー栄養療法医の認識の違いになるわけです。
このような理由から保険診療医は問題意識することなく、潜在性鉄欠乏症による頭痛は埋もれてしまっているわけです。確かに疾患ではありませんが、栄養障害で、それにより多数の症状が出ることがわかっているのです。しかし、頭痛関連の学会や専門医は無視するのですよ、なぜか(笑)。
もう一つは「スマホチャージache ®」(ブログ:スマホチャージache®)は自分が作った造語です(お知らせ:商標登録:「スマホチャージache®」)。こっちは更に認識されていません。自分は普段の診察の中で、頭痛を訴えて受診された若い人には必ずこの話をするのですが、対応すると今まであれだけしつこかった慢性頭痛があっという間に消失したという話をかなり高頻度で聞きます。スマートフォンを寝る前に見ることは、ブルーライトにより悪い影響があるかもしれない位は聞いたことがあるかと思います。使用していなくても、寝ている時に目覚まし時計代わりに枕元に置いて、充電しておくことだけで悪いのです。今日からスマートフォンを寝室とは別の部屋に置いてみましょう!これならお金はかかりません(笑)。最後に追加でもう一つ、若い方はコードレスのイアホンをしている方が多いですね。あれも健康に悪影響を及ぼす危険性は否めません。かく言う自分も数年前に買ってしまいました(笑)。せっかく買ったのですが最低必要限しか利用していません。このようなことを発信している医者もいるということを知っておいてください!
一つの症状は原因が一つではありません。複数の要因が重なって症状として出るのです。この2つは若い方の慢性頭痛の原因として、かなり大きなウエイトを占めています。是非、皆様も頭に入れておいてくださいね。
頭痛を何度も繰り返し、医療機関に行っても同じ結果なので通院をあきらめ、薬局で市販薬を購入し汎用するという方、消炎鎮痛剤の慢性的な汎用は「薬剤誘導性頭痛」を誘発し、それを服用しているから頭痛が誘発されるという結果にもなりかねません。また、胃にも負担がかかり、胃潰瘍の一因にもなりますので、ご注意ください!皆様方のご健康を心よりお祈り申し上げます