過剰なエネルギーは中性脂肪として白色脂肪細胞(ブログ:脂肪細胞)の脂肪滴に蓄えられ、エネルギー欠乏時にそれを動員するというメカニズムは前稿でお話ししました(ブログ:リパーゼ)。白色脂肪細胞の脂肪滴に蓄えられた中性脂肪は、リパーゼにより分解され脂肪酸となり血中に分泌されアルブミンに結合して体内を循環し、各組織・細胞に取り込まれます。細胞に取り込まれた脂肪酸はエネルギー産生工場であるミトコンドリアに向かい、そこで燃焼されエネルギーとなります。
今回は、分解された脂肪酸が全身の細胞に分配され、細胞内に入り、その後にどのようにエネルギー産生工場であるミトコンドリアマトリックスの中に入っていくかをお話しします。
アシル基とは有機酸や脂肪酸のカルボキシル基(-COOH)の(-OH)を除いた部分の総称です。
血中アルブミンから離れて細胞質内に取り込まれた遊離脂肪酸のアシル基は、細胞質内でコエンザイムA(CoA)と結合し、アシルCoAとなります。アシルCoAはミトコンドリア外膜を通過しますがアシルCoAのままではミトコンドリア内膜を通過することができずマトリックス内に入ることはできません。一方で、中鎖脂肪酸(炭素数6~12個の脂肪酸)はマトリックス内に入っていくことができるために即効性のエネルギー源になります。
長鎖脂肪酸由来のアシルCoAがミトコンドリア内膜を通過しマトリックス内に入るためには更なる過程が必要で、その重要な働きをするのが「L-カルニチン」です(ブログ:L-カルニチン)。L-カルニチンは血中から細胞膜上のカルニチントランスポーターであるOCTN2(Organic cation Carnitine Transporter 2)より、細胞質内に入り、ミトコンドリア外膜と内膜間、内膜内のマトリックスに至るまで存在しています。これらは動的平衡状態にあり、血液内に存在するカルニチン濃度は原則的にそれを反映しています。
細胞内に取り込まれた遊離長鎖脂肪酸は、ミトコンドリア外膜に存在するLCAS(長鎖脂肪酸活性化酵素)によりCoAが付加され、アシルCoAとなり外膜の内側に入ります。外膜に存在するCPT-1(カルニチン-パルミトイル転移酵素-1)により、アシル基がカルニチンに転移し、アシルカルニチンになります。この形になって、CACT(カルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼ)により、内膜を通過することが可能になり、マトリックスに到達することができるのです。アシルカルニチンは内膜に存在するCPT-2(カルニチン-パルミトイル転移酵素-2)により、元通りのアシルCoAになります。これで、長鎖脂肪酸由来のアシルCoAはミトコンドリア内膜を無事に通過して、エネルギー産生工場であるミトコンドリアのマトリックスの中に入ることができました。難しい話をしましたが、長鎖脂肪酸はL-カルニチンの介在によって、脂肪酸の燃焼(β酸化)が行われるミトコンドリアのマトリックスに到達することができるわけです。十分なL-カルニチンが無いとダイエットも効率的にできないのです (笑)。L-カルニチンの充足無しに、食べないだけのダイエットをしても効率的な脂肪燃焼はできないのですよ。L-カルニチンの補給のためには北海道名物「ジンギスカン」を食べましょう!(陰口:「毎日、ジンギスカンを食べるより、L-カルニチンサプリメントを飲んだ方が安上がりだ!(笑)」)
L-カルニチンは75%が食物由来、25%が体内合成です(ブログ:L-カルニチン)。また、L-カルニチンの合成のためには「Fe2+(鉄イオン)」も必要です。有経女性のほぼ100%は鉄不足ですからL-カルニチンが不足しているのは明らかですね。余程ジンギスカンを食べなきゃ(笑)。
このようにL-カルニチンは長鎖脂肪酸(アシル基)をミトコンドリア内へ運搬するトラックの役割をしています。それによりミトコンドリアのマトリックスに運び込まれたアシルCoAは燃焼され、エネルギーとなっていくのです。一方で、何らかの原因でミトコンドリア内に蓄積した有害なアシル基をミトコンドリア外に運び出し、その毒性を軽減する働きもあります。この両方向のアシル基運搬体として働くのがL-カルニチンです。これを「カルニチンシャトル」と呼びます。
ミトコンドリア内に有害なアシル基が存在すると、CoAと結合してアシルCoAとなるため、これに消費された遊離CoAが低下し、正常のエネルギー代謝が阻害されてしまいます。この有害なアシルCoAは様々な酵素を阻害し、ミトコンドリアの代謝機能を阻害してしまいますが、遊離カルニチンが十分に存在していると、有害なアシル基を積み込み、アシルカルニチンとなり、ミトコンドリア外に排出して、有害なアシル基の毒性を軽減でき、ミトコンドリアの機能を回復することができます。血中に流れ出た有害なアシルCoAを積んだアシルカルニチンは尿から体外へ排泄されるので、L-カルニチンはミトコンドリア内をデトックスする役割があるということです。
この「有害なアシルCoA」がくせ者なのですよ。これらによりミトコンドリア内のエネルギー代謝に関わる酵素を阻害し、遊離CoAを消費してしまい、円滑なエネルギー産生ができなくなることで、病的慢性疲労といわれる、いわゆる長期にわたり「具合が悪くなる」のです。最近、流行したウイルス感染症関連でこのような患者様の話を多く聞きますよね。この有害なアシル基をミトコンドリア内から運び出して、尿に排泄してくれる役割を持つのが、空のトラックである「遊離カルニチン」です。空のトラックがなければ荷物は運び出せませんが、空のトラックを充足させると勝手に荷受けして運び出してくれます。ですから、病的慢性疲労と呼ばれる具合の悪さを解消するには、空のトラックである「遊離カルニチン」を増やし、有害なアシル基により機能不全を起こしているミトコンドリアの中をデトックスし、ミトコンドリアの代謝機能を回復させればいいのです。そのためにL-カルニチンを補給しましょう。この話が、今時流行りの病的慢性疲労治療の肝になるのですよ。と言ってもそんなことを言うのは日本中で自分と井上正康先生とお世話になっているカルニチン博士のO先生だけですが(笑)。ただし、自分の臨床経験上、その効果の発現には数か月~年単位での長期間必要なので長い目で見て、じっくりと継続する必要があります。患者様には十分にお話しするのですが、数か月で諦めてしまう方もいらっしゃるのも事実で、これでは良くなるものも良くなりません。それで効かなかったと評価されるのは残念です。また、L-カルニチンは治療のための大きな一つの手段ではありますが、それだけでは敵を倒せないことも事実です。それ以外の工夫も必要なのです。
当院オーソモレキュラー栄養療法外来では現在、体調不良の患者様にカルニチン血中濃度をチェックしています。いろいろな理由で受診されますが、体調不良の方の大半はL-カルニチンが低い傾向にありますね。カルニチン血中濃度は、保険診療ではごく狭い範囲の疾患にしか適応になりません。しかも、他の臨床医がこのような話を知らんし、解釈もできない。それじゃ、いつまで経っても治療できるとは思いません。だから、どこの医療機関に行っても、「異常はありません。原因不明です。心療内科を受診して下さい!」と言われ、心療内科では症状だけの判断でうつ病などの精神疾患として治療され、薬漬けにされて余計調子悪くなるということになってしまうのです。
当院では自由診療で「カルニチン血中濃度検査」をしております。自由診療、完全予約制です。ご希望の方は「サプリメント申込みフォーム」より、ご連絡ください。
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カルニピュア(医療向けL-カルニチンサプリメント)
\4,000(税抜):60カプセル入り(1日4カプセルで15日分)
1カプセルに250mgのL-カルニチンが含有、摂取量は1日1,000mgの分割摂取です。