新型コロナウイルス感染後の病的慢性疲労 脳神経外科おたる港南クリニック

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新型コロナウイルス感染後の病的慢性疲労

 新型コロナウイルス感染後の病的慢性疲労のメカニズムについて解説します。この内容は2024年3月7日に公開したブログ(ブログ:長期的な慢性疲労でお悩みの方へ)から始まり、2024年5月10日に公開したブログ(ブログ:筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS))までの12稿の関連ブログの内容を理解していないとわかりにくい内容と思います。特に一般の方には大変理解しにくいと思いますが、医師や研究者が読んで、納得していただけるよう詳細に解説しました。一般の方は概略をご理解いただければよろしいかと思います。
 新型コロナウイルス後遺症は、明らかに新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が原因と判明していますが、現状、新型コロナウイルス感染後に生じる病的慢性疲労の大半は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)と呼称されています。しかし、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は原因が不明です。ですから、ここでは新型コロナウイルス感染後に生じる慢性疲労を筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とは呼ばずに「新型コロナウイルス感染後の病的慢性疲労」と呼ぶことにします。共に同様の症状を呈することはわかっていますが、自分は新型コロナウイルス感染後遺症を筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とは区別して定義することが妥当であると思います(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は同様の症状を呈する病態の集合体ですから、結果的にはもしかしたら、その一部に含まれることになるかもしれませんが)。
 様々な研究結果から、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は脳内で増殖しないという事実は明らかになっています。脳内炎症が生じているのに脳内でウイルスの増殖やそれに対応する免疫細胞が反応していないということは絶対的な事実です。
 この状況下で、東京慈恵会医科大学ウイルス学講座:近藤一博教授らは「SITH-1タンパク質」に注目しました(ブログ:うつ病の原因遺伝子)。うつ病の原因遺伝子である「抗SITH-1遺伝子」が発現する「SITH-1タンパク質」も新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)も病的慢性疲労を引き起こし、嗅球を障害するという共通点があったからです。

 そこで、新型コロナウイルス感染後の患者の「抗SITH-1抗体価」を測定したところ、後遺症を自覚した61%の患者が陽性でした。感染していない健常人と、感染後に後遺症を訴えていない患者は陰性でした。「抗SITH-1抗体価」が陽性であった患者は疲労感やうつ症状、ブレインフォグが認められ、一方で、「抗SITH-1抗体価」が陰性で感染後に後遺症が残った患者では咳嗽や脱毛が多くみられ、疲労感やうつ症状、ブレインフォグは認められず、抗SITH-1抗体価の関与により残存する症状は異なりました。
 うつ病の原因タンパク質である「SITH-1タンパク質」は、脳内に入らなくても嗅球のアストロサイトに作用し、細胞内カルシウム濃度を上昇させ、アポトーシス(細胞死)を生じ、コリン作動性抗炎症経路を障害し、脳内炎症を引き起こします(ブログ:うつ病の原因遺伝子)

 そこで、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)でSITH-1タンパク質と同様に細胞内カルシウム濃度を上昇させるタンパク質はないのか探したところ、なんとそれはスパイクタンパク質の一部である「S1タンパク質」だったのです。
 そこで、マウスの嗅球に「S1遺伝子」を導入して、鼻腔内の細胞に「S1タンパク質」を発現させました(S1マウス)。この結果、S1マウスは倦怠感、うつ症状を呈し、嗅球にてアポトーシスが生じていました。また、S1マウスの脳では炎症性サイトカインの産生亢進が認められ、脳内炎症が生じていました。一方で脳内ではS1タンパク質は発現されておらず、それに対する免疫反応も生じていませんでした。更に脳を詳しく探索したところ、脳内におけるアセチルコリン産生は低下し、コリン作動性抗炎症経路が障害されていました。そこで、アセチルコリンの不足を補うための医薬品を投与したところ、脳内アセチルコリンは上昇し、脳内炎症は沈静化し、症状も消失しました。
 このマウスの実験結果から、ヒトにおいては、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の「S1タンパク質」が、脳内アセチルコリンを低下させ、コリン作動性抗炎症経路を障害し、感染によって脳以外の部位で発生した炎症性サイトカインが脳内で処理できないので脳内炎症が継続するという仮説が成り立ちます。感染急性期を過ぎてしまえば「S1タンパク質」は免疫機構によって体内から排除され消失されるので、アセチルコリンは次第に増加し、コリン作動性抗炎症経路の障害が回復してくるので疲労感は消失していきます。

 ところが、感染急性期の疲労感が消失せずに長期間にわたって症状が残存する症例もあり、これを「新型コロナウイルス感染後の病的慢性疲労」と言います。感染急性期は、ウイルス由来の「S1タンパク質」が脳内アセチルコリンを低下させ、コリン作動性抗炎症経路を障害し、脳内炎症を引き起こします。同時に感染急性期に存在した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)によってヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)が再活性化し、それによって産生された「SITH-1タンパク質」がアセチルコリンを低下させることで、コリン作動性抗炎症経路の障害が継続してしまい、本来処理できるはずの脳内炎症を処理できないため、感染急性期を過ぎてしまった後にもうつ病と同じメカニズムで、病的慢性疲労が長期間にわたり継続してしまうのです。「S1タンパク質」→「SITH-1タンパク質」と役割を引き継ぐリレーのバトンのようですね。つまり、新型コロナウイルス感染後の病的慢性疲労になった人は赤ちゃんの頃に突発性発疹に感染した時にうつ病になりやすい、「SITH-1タンパク質」を発現しやすいタイプのHHV-6に感染していたことになります。外的ストレスではなく、体内に侵入してきた新型コロナウイルスの影響で、うつ病と似たような症状を起こすことが新型コロナウイルス感染後の病的慢性疲労ということになります。
 前稿(ブログ:筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS))でお話ししましたように筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)ではHHV-6の再活性化は起きていません。ですから、新型コロナウイルス感染後の病的慢性疲労を筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)と呼ぶことは不適切なのです。おそらくは別のウイルスが関与しているか、別の原因が存在するのでしょう。新型コロナウイルス感染後の病的慢性疲労では脳内炎症が存在し、それを沈静化できない理由はアセチルコリン産生の低下によるコリン作動性抗炎症経路の障害です。一方、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)ではその原因はわかりませんが、脳内炎症が存在しているのは事実です。そして、その理由はコリン作動性抗炎症経路の障害であるかどうかはわかりませんが、かなり有望な原因ではないかと思います。
 以上が新型コロナウイルス感染後の病的慢性疲労のメカニズムです。しかし、これはワクチン非接種者が感染した場合です。
 ワクチン接種者は、ワクチン接種によって自身の身体の細胞がスパイクタンパク質(S1タンパク質+S2タンパク質)を産生し続けます。たった1回の接種でも継続して産生し続けます。もしかしたら数年後には消失するかもしれませんが、2年経過後の現在も依然として産生し続けています。非接種者は免疫がウイルスを排除してくれるので、感染急性期が過ぎれば「S1タンパク質」は消失します。ところが、接種者はワクチンの影響により自身の細胞が継続して「S1タンパク質」を産生し続けます。ワクチンを接種したことで病的慢性疲労の症状を呈した方は「S1タンパク質」が消失しないので改善することは難しく、一度でもワクチンを接種した方は感染後に病的慢性疲労を生じた場合は自分の産生する「S1タンパク質」とウイルス由来の「S1タンパク質」の二重攻撃に合ってしまいます。感染が終了し、ウイルス由来の「S1タンパク質」を免疫が排除してくれたあとでも、ワクチン由来の「S1タンパク質」は継続するという二重攻撃のために、接種者の感染後におきる病的慢性疲労は非接種者より、難治性です。これが、自分が「一度でもワクチンを接種した人は、たとえ感染後に症状を呈しても感染後遺症ではなく、ワクチン接種後症候群として扱わせていただきます(https://biochemicaldiet.com/sequelae:当院で行う後遺症に対する治療の欄)」ということの理由です。非接種者の新型コロナウイルス感染後の病的慢性疲労より、接種者の病的慢性疲労は難治性になってしまうわけです。
 従って、「新型コロナウイルス感染後の病的慢性疲労」の治療は、まずは脳内炎症を抑制するために何らかの方法でコリン誘導性抗炎症経路の障害を回復させること、そして、活性化しているHHV-6を何とか沈静化させ、「SITH-1タンパク質」の発現を抑えることなのです。「SITH-1タンパク質」は潜在感染タンパク質ですので、長期的に発現し、発現を抑制するためにも然るべき時間を要するのです。従って、短期的な期間では改善しないことをご理解ください。また、これは「新型コロナウイルス感染後の病的慢性疲労」のメカニズムの一つの大きな原因であることは間違いないのですが、それ以外にも影響を及ぼしている因子がいくつかあり、それを考慮して、治療は総合的に行わなければ十分な回復はいたしません。是非、じっくり腰を据えて、治療に臨んで下さい。
 ちょっと前に感染後遺症を起こさないためにワクチンを接種しましょうとメディアで言っていた医者や政治家がいました。よくもまあ、こんなデタラメをのうのうと発信していると思っていました。人を苦しめようとしていたのでしょうか?奴らは必ず断罪されなければなりません。そして、世間はそれを許してはならないと自分は思います。その話を聞いて接種を決断して、命を落とした人や今でも後遺症に苦しんでいる人たちがたくさんいるからです。とは言え、自分は医者ですから苦しんでいる患者様を自分の知識で少しでも救おうと決めて、この4年間にわたり精進してきました。もちろん、今でもわからないことはたくさんで、完全にデトックスさせる方法は今のところ全くわかりません。しかし、試行錯誤を繰り返してきた4年間の中で、苦しんでいる方の症状を少しでも緩和させることができる自信がつき、治療の根幹も見えてきました。但し、残念ながら、現在、医療現場で行われている保険適応内の医療では治療は困難です。手段がありません。患者様には大きなご負担をおかけしますが、手段が無ければ治療の仕様がありません。以上を十分にご理解した上で、当院の「新型コロナウイルス感染症関連後遺症外来」を受診していただくようお願い申し上げます。
 ふと考えたのですが、「新型コロナウイルス感染後の病的慢性疲労」、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」、「うつ病」などの病的疲労は、その原因はその疾患によって異なりますが脳内炎症が生じていることは共通です。つまり、脳内炎症を沈静化することで、多くの病的疲労を軽快させることができる可能性が出てきました。新型コロナウイルス関連後遺症の賜物ですね。
 保険医療機関にて、「謎の体調不良」と言われた方は是非一度、当院「オーソモレキュラー栄養療法外来」を受診してみて下さい。保険診療医とは全く別のアプローチで治療いたします!

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