うつ病の原因遺伝子 脳神経外科おたる港南クリニック

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うつ病の原因遺伝子

 ストレスや仕事量が同じでもうつ病になる人とならない人がいます。また、遺伝率は30~50%と言われています。そこで、東京慈恵会医科大学ウイルス学講座:近藤一博教授らはその素因を探ってみました。まずはヒト染色体の全ゲノム(遺伝子)解析を行いましたが、うつ病関連遺伝子は一つも見つかりませんでした。そこでヒトの身体の中に存在する細菌叢(マイクロバイオーム)のゲノム解析も行ってみましたが、こちらでもうつ病関連遺伝子は見つかりませんでした。
 そこで、近藤らはヒトの細胞を培養させて、ウイルスの潜伏・持続感染を成立させる実験系を作り、メタゲノム解析を行いました(「メタゲノム解析」とは、ヒトゲノムとマイクロバイオーム、バイローム(ヒトの身体の中に存在するウイルス)をまとめて解析すること)。彼らは以前からヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)と生理的疲労のメカニズムを研究していました(ブログ:生理的疲労のメカニズム)。そこで、ヒトの末梢血から分離培養したマクロファージ(免疫細胞)を利用した系と、脳のアストロサイト(神経細胞を構造的に支えるものと考えられていましたが、その機能は多彩です)を利用した系にそれぞれHHV-6を潜伏・持続感染させた2つの実験系を確立しました。そして、メタゲノム解析から、潜伏・持続感染遺伝子として、マクロファージには「H6LT」、アストロサイトには「SITH-1」を発見しました。つまり、うつ病の原因遺伝子はヒトゲノムのみの解析では同定されず、潜在・持続感染しているHHV-6が再活性化した時に出現したことによって同定されました。

 マクロファージにHHV-6が潜伏・持続感染しているところにストレスが加わり、elF2αのリン酸化が生じるとマクロファージに発現している遺伝子「H6LT」がタンパク質(IE1、IE2)を産生し、HHV-6の増殖を促進します。HHV-6が増殖すると感染しているマクロファージは速やかに唾液腺に移動して、唾液中にHHV-6を放出し、これが他の宿主に感染していきます。そして、高頻度でHHV-6に曝されている嗅球のアストロサイトに潜伏し持続感染を成立させます。すると嗅球のアストロサイトに「SITH-1遺伝子」が発現し、「SITH-1タンパク質」が産生されるのです。

 「SITH-1タンパク質」は「Calcium modulating ligand(CAML)」と結合して、細胞内のカルシウム濃度を上昇させ、嗅球のアストロサイトにアポトーシス(細胞死)を引き起こしたのです。
 次に近藤らはマウスの嗅球にSITH-1遺伝子を導入したところ(SITH-1マウス)、嗅球でSITH-1タンパク質がCAMLと結合し、細胞内カルシウム濃度は上昇し、その結果アポトーシス(細胞死)が生じ、SITH-1マウスはうつ症状を示しました。SITH-1マウスの脳を調べたところ、アセチルコリンの著明な低下がみられ、コリン作動性抗炎症経路が障害されていました。
 ところが、うつ病の特徴的所見である脳内炎症は生じていませんでした。そこで、うつ病の最大の引き金であるストレスを負荷したところ、SITH-1マウスは脳内炎症を起こしたのです。つまり、ストレスによって引き起こされたelF2αのリン酸化により炎症性サイトカインが発生し、脳内炎症を引き起こしたということです。そして、SITH-1の作用によって、コリン作動性抗炎症経路の障害を受けているために消火活動ができない状況となり、脳内炎症が継続し、病的疲労が継続するという訳です。この結果により、うつ病の発症メカニズムはほぼ解明されました。
 では、うつ病の素因はどこにあるのでしょうか?諸悪の根元は「SITH-1遺伝子&タンパク質」で、「SITH-1のmRNA」に「R1部分」という繰り返し構造があり、その中にある「R1A配列」がうつ病になりやすいかどうかを決定する原因だということです。「R1A配列」の繰り返しが17回以下のHHV-6に感染した人はうつ病患者の67.9%、オッズ比は5.28倍となるそうです。つまり、約5倍の確率でうつ病になりやすいことがわかりました。うつ病の遺伝率は30~50%です。つまり、HHV-6が親から感染する確率が30~50%ということのようですね。将来、うつ病になるのかならないのかということは赤ちゃんの時に発症した突発性発疹の原因ウイルスであるHHV-6のバリエーションによるということです。だから今、うつ病で悩んでいる方は残念ながら、赤ちゃんの頃にうつ病になりやすいHHV-6に感染してしまったということです。中高年になってもうつ症状が無い方はうつ病になりにくいHHV-6に感染したということです。もちろん一つの疾患の原因は一つではなく複数のことが重なり合って発症するので、断定はできませんが、うつ病に対するこのメカニズムはかなり大きなウエイトを占めていると思います。
 新型コロナウイルス感染症も世間はそのウイルスの病原性ばかりしか注目しません。何度も言うように同じ感染症でも、重症度が異なるのは宿主の免疫力が違うからです。癌も同じです。宿主の免疫力を向上させるということにはほとんど目を向けず、化学療法や放射線で敵をいかにつぶすかを考えているのが現代保険医療です。うつ病による自殺もそうです。宿主側の問題はとりざたされず、加えた側のストレスだけしか問題にしません。同じストレスを受けても、うつ病になり自殺を選ぶ人もいれば、強く生きていく人もいます。全てはそのバランスのもとに決定されるのです。
 過労死やいじめなど、ストレスによる様々な社会問題が多くなってきている中で、こういう科学的事実がわかってきた今、それに気づかない社会を早期に覚醒させなければなりません。
 今回のコロナ騒動で明らかになったことは、医者の多くが全体を俯瞰してみることができない専門バカばかりで、勉強不足なのかということです。医師としての名誉や社会的地位なんかまったく信用できないことがわかりました。医師たるもの患者の生命と健康を守ることが使命である!ここまで、最悪の薬害が発生しているのに、それを屁理屈付けて否定したり、今になってそれが勉強不足だから知らなかったとか言って、自己弁護したりしても全てはご自分の責任なのですよ!挙句の果てに科学的根拠をベースに反対のことを言っている我々を陰謀論者扱いにしました。その報いは必ず戻ってくる!いや、そのような医師は将来、必ず断罪されなければならない。そういう意味では医師不足状態にあるのが問題です。使い物にならんバカ医者なんか、医師免許を持っていても働く場所がないような社会にならないと日本の医療は良くならない。医師免許をもっているだけでふんぞり返っている医者なんかさっさと辞めてくれ!
ではまた!皆様方のご健康を心よりお祈り申し上げます。

【疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた】近藤一博 ブルーバックス:講談社