生体は生命活動を維持するために常に化学反応を行っており、これを代謝といいます。代謝の機能には大きく3つあります。第一は、生命活動に必要なエネルギーを産生すること。第二は、食物を生体に必要な構成成分に変換すること。三つめは、不必要になった廃棄物を分解し排出すること、です。
これらの生体内で起こる化学反応において、触媒として機能するタンパク質を酵素(Enzyme)といいます。触媒とは一般に、特定の化学反応の反応速度を速める物質で、それ自身は化学反応の前後で変化しないものです。生成物は、次の化学反応を担当する酵素によって、更に別の生成物へと変化していきます。この一連の流れを代謝といいます。このように酵素が介在することにより、速やかにかつ効率的に、生体に必要な物質を生成し、不必要な物質を分解し生命活動が維持されていくのです。
酵素はタンパク質です。従って、身体にタンパク質が十分になければ酵素も十分に作られません。また、酵素は単独では機能しません。補酵素(タンパク質)という酵素の働きを補うものが必要です。酵素の働きを補うものでタンパク質ではないミネラルやビタミンがあり、これらを補因子といいます。生体の化学反応はこれら全てが揃って、共同して働くことによって円滑に進むのです。ですから、きちんとそれらを充足させなければ細胞は十分に働いてくれません。このように細胞が正常に機能するために必要な栄養素が不足して、細胞の機能に悪影響を与え、不必要な栄養素を過剰に摂り過ぎている状況を質的栄養失調といいます。この一連の代謝が円滑に進行しない状況が、細胞一つ一つの働きの機能不全を起こし、様々な体調不良を誘発し、結果的に疾患の発生につながっていくのです。
肥満は十分なエネルギー産生ができなくなることで、不必要でかつ過剰な糖質を摂取せざるを得ない状況になっていくのです。食事制限のみのダイエットを行う方は全体的に食事量やカロリーを制限します。そうすると必要なタンパク質が十分に生成できなくなります。これでは更に状況は悪化していきます。
つまり、健康であるためには、必要なものを十分に食べ、不必要なものは食べないことが重要なのです。ところが、現代の食生活では不必要なものを過剰摂取し、必要なものを十分に摂取していないのです。ダイエットは食べないことではないのです、ダイエットは必要なものをしっかり食べることなのです。ほとんどの人がその逆を行っています。食べないことで一時的なダイエットは完結できますが、必ずリバウンドし、状況は更に悪化していくのです。
質的栄養失調 ー代謝と酵素ー