生物において、細胞の活動するエネルギーを「ATP」と言います(ブログ:ATP(アデノシン三リン酸))。ATPは、一般的には食事に含まれているブドウ糖、脂肪(脂肪酸、グリセロール)を原料として産生され、ある条件の下にタンパク質(アミノ酸)やケトン体、乳酸を材料として作られます(ブログ:エネルギー産生系)。

ここでは正常な人の安静時のエネルギー利用について説明します。エネルギーのメインはブドウ糖と脂肪酸で、安静時・空腹時には全体として、約30~40%がブドウ糖、約60~70%が脂肪酸を利用しています。この2つは臓器や食事や運動などの条件下により主とするエネルギー源が異なります。
一般的にはエネルギー源としてブドウ糖が知られていると思いますが、脂肪酸もブドウ糖同様エネルギー源として利用されています。自分も、脂肪酸はブドウ糖が枯渇した時に利用されるのだと思っていたことがあります。正しくエネルギー利用を認識するためには、脂肪酸も安静時にエネルギー源として利用されているということを知る必要があります。タンパク質もエネルギー源の1つになりますが、タンパク質は飢餓状態、激しい長時間の運動など糖質代謝のみではまかないきれないエネルギーが必要な時、正常な糖質代謝ができない病的な状態、タンパク質摂取が極端に多い時などのような特殊条件下で利用されます。ここではこの例外的なことは無視します。
エネルギー源として、ブドウ糖を利用するのか、脂肪酸を利用するのか、あるいは両方を利用するのかは臓器によって異なります。
【脳】:脳のエネルギー源は普段の状態ではブドウ糖のみです。脂肪酸は使われません。しかし、糖不足の時はケトン体も使います。脳のエネルギー源として、このケトン体を利用することが、脳疾患の治療に寄与する可能性があります。
【赤血球】:赤血球は100%がブドウ糖依存です。赤血球にはミトコンドリアが無いので、嫌気性解糖系で発生したATPを利用します。酸素を運ぶ赤血球自身は、酸素を使わずに嫌気的条件下でエネルギーを利用しています。
【心筋】:心筋は安静時には70%以上が脂肪酸です。体脂肪として蓄えられている脂肪組織から動員された脂肪酸と食事由来のリポタンパク中の中性脂肪が分解されて生じた脂肪酸を利用します。ここではブドウ糖は補助的なエネルギー源として使われます。食後などブドウ糖が多い状態になるとブドウ糖を利用することが多くなり、脂肪酸利用率は相対的に低下しますが、無くなるわけでなく継続しています。他に乳酸やケトン体も利用されます。さすがに心臓は働きを止めてしまったらまずいので、全ての栄養源を利用するのですね。睡眠時には何も食べないので、心臓のエネルギー源として、体脂肪のβ酸化により分解された脂肪酸が重要な役割を果たします。睡眠時に体脂肪は燃えていると言えますね。「寝る子は痩せる」でしょうか(笑)。
【骨格筋】:骨格筋は安静時には脂肪酸優位で、運動強度の上昇や持続時間の長時間化に伴いブドウ糖の利用が増加します。
【肝】:肝は主に脂肪酸とアミノ酸をエネルギー源として利用します。ブドウ糖は全身に配るための供給する役割なのであまり使いません。
【小腸上皮】:小腸上皮では主要なエネルギー源は非必須アミノ酸のグルタミンです。
ブドウ糖も利用されていて、この二つがメインです。
【腎皮質】:エネルギー源として脂肪酸をメインに利用し、ブドウ糖の利用が少ないことが特徴です。一方で腎髄質はブドウ糖の利用がメインですが、乳酸やケトン体も利用します。
このように臓器によりエネルギー源が異なることを理解することが重要です。これを利用して、その臓器の機能を改善し、疾患を治療する糸口になります。





