ビタミンDの抗がん効果 脳神経外科おたる港南クリニック

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ビタミンDの抗がん効果

 東京慈恵会医科大学浦島充佳教授の研究グループは、ビタミンDの抗がん効果を検証するために「二重盲検ランダム化プラセボ比較臨床試験(エビデンスレベルが最も高い臨床試験)」を行いました。プロジェクト名は「アマテラス試験」です。その結果を2019年2月に国際医学雑誌:JAMAに発表しました。

「アマテラス試験」(東京慈恵会医科大学)
【対象と方法】
 417人の食道がん、胃がん、大腸がんの患者にビタミンDサプリメント(1日2,000IU)を摂取する群(ビタミンD群)とプラセボを摂取する群(プラセボ群)に3:2の割合で振り分け、各々5年無再発生存率で比較検討しました。
【結果】

 ビタミンD群では5年無再発生存率は77%で、プラセボ群は69%でした。ところがハザード比(1より小さければ効果があることを意味し、小さければ小さいほど効果は強いという指標)は0.76、p値(p<0.05で統計的に有意)=0.18となり、傾向的には効果がありそうであるが、統計的には有意ではないという結論になりました。
【Effect of Vitamin D Supplementation on Relapse-Free Survival Among Patients With Digestive Tract Cancers: The AMATERASU Randomized Clinical Trial. 】Urashima. et al. JAMA. 2019 04 09;321(14);1361-1369. doi: 10.1001/jama.2019.2210.

「サンシャイン試験」(ハーバード大学)
 一方で、米国ボストンのハーバード大学の研究グループが似たような研究結果を発表しました。しかも、JAMAに同時掲載されたのです。
 彼らは大腸がん(ステージ4)の患者さんにビタミンDサプリメント(4,000IU/1日)を摂取する群(高量摂取群)とビタミンDサプリメント(400IU/1日)を摂取する群(低量摂取群)を対照として、延命効果を比較しました。高量摂取群では平均生存期間が13か月で、低量摂取群の11か月に比較して、約2か月の延命効果があるという結果になりました。免疫チェックポイント阻害剤の進行肺がんの延命期間は約3か月で、ノーベル賞受賞の医薬品と大きく変わらない結果が出たのですが、p=0.07となり、アマテラス試験同様に統計的には有意ではないという結論になりました。
【Effect of High-Dose vs Standard-Dose Vitamin D3 Supplementation on Progression-Free Survival Among Patients With Advanced or Metastatic Colorectal Cancer: The SUNSHINE Randomized Clinical Trial.】Ng.et al. JAMA. 2019 04 09;321(14);1370-1379. doi: 10.1001/jama.2019.2402.

「VITAL試験」(ハーバード大学)
 その後、ハーバード大学の研究グループは超重要な追加発表をしました。がん全体ではビタミンDサプリメントはその発症を予防できないが、「死ぬがん(ステージ4の進行がん)」のみに焦点を当てるとその発症を予防できることがわかった。という発表です。

 摂取開始から6年の時点で、ビタミンD群はプラセボ群に比較して、「死ぬがん」の発症が約17%減少したのです。また、もう一つの特徴として、開始から1年半までは両者にあまり差は見られず、その期間を過ぎると経時的に差は開いていったということも分かりました。
【Effect of Vitamin D3 Supplements on Development of Advanced Cancer: A Secondary Analysis of the VITAL Randomized Clinical Trial.】 Chandler PD et al. JAMA network open. 2020 11 02;3(11);e2025850. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2020.25850.

 その後、2つの「メタ解析」にて、ビタミンDががんによる死亡率を12~15%低下させることが示されました。

 浦島教授の研究グループはこれらの結果を踏まえて、以下の条件を追加し、「アマテラス試験」を事後解析しました。

  • ビタミンⅮ摂取後、1年未満の再発・死亡は含めない。
  • 対象を免疫病理組織検査において、抗p53抗体により、10%以上染色される患者のみにする。
  •  前稿(ブログ:p53がん抑制遺伝子)でお話ししたように悪性度の高いがんには「p53タンパク質」に変異が多く存在していることがわかっています。この条件は悪性度の高いがん患者のみに対象を絞っているということになります。

     この2つの条件を加えて解析したところ、ビタミンD群の5年無再発生存率は88%となり、一方でプラセボ群は62%となりました。ハザード比は0.33(95%信頼区間:0.17~065)、ここからビタミンD群は死亡リスクを3分の1に抑制したことが分かります。また、p=0.001となり、統計的に有意であると判断されます。
    エビデンスとしてはこれだけでも十分に良さそうですが、更に確実なビタミンDの抗がん作用を証明し、決着をつけるために、浦島教授の研究グループは2022年1月に「アマテラス2試験」を開始しました。「アマテラス試験」は2010年1月に開始し、論文発表が2019年4月と、9年の長い年月がかかっているので、2022年1月に開始した「アマテラス2試験」の発表は2031年頃になるでしょうか?

    【ビタミンDでがんの再発・死亡を予防する!ビタミンDは副作用のない抗がん剤】浦島充佳 さくら舎

     この結果はほぼ確定です!証明されてから摂取しようではかなりビハインドしますね。「アマテラス2試験」は「アマテラス試験」の結果を文句ない結論として、しっかりとした統計的手法によってエビデンスをかためるためのものです。ビタミンDサプリメントは誰にでもすぐに手に入ります。日本国民の98%が不足しているという事実があり(ブログ:日本国民の98%がビタミンD不足!)(ブログ:北海道民のビタミンD血中濃度)、サプリメントの副作用が適切な使用により皆無となれば、摂取しない理由は無いでしょう!

     「ビタミンDは健康長寿の1丁目1番地!」今こそ、「キープD®!」と声高に言い続けます!医療用ビタミンDサプリメントをご希望の方は「サプリメント申込みフォーム」よりご連絡ください。