隠れ貧血(潜在性鉄欠乏症) 脳神経外科おたる港南クリニック

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隠れ貧血(潜在性鉄欠乏症)

最近はテレビやインターネットで、「隠れ貧血」という言葉を耳にすることが多くなりました。潜在性鉄欠乏症(隠れ貧血)とは、全人類にとって最も多く存在する栄養障害なのですが、ほとんど認知されておりません。特に成長期の子供や有経女性には100%に近い頻度で該当しているのです。しかし、それに気がつく人は余程、その情報を集めに行っている人でなければいらっしゃいません。

健康診断や一般の医療機関で行う血液検査の項目には、「Hb(ヘモグロビン):血色素量」という項目が必ずあります。Hbは赤血球に存在するタンパク質で鉄を含有しています 。Hbの値が<12.0g/dLだと貧血と判断されます。さらに「MCV(平均赤血球容積)」という項目もあります。MCVの場合は、値が<80fLの場合に小球性貧血と診断され、鉄欠乏を疑うというのが一般的な医師の診断です。このように、鉄欠乏を調べるためには様々な項目がありますが、鉄欠乏を診断する上での大前提は、Hbが12.0g/dL未満であることです。従って、Hb≧12.0g/dLの場合は「異常無し」と判断されます。ところが、現状では、Hb≧12.0g/dLの場合にでも、頭痛やふらつきなどの症状を訴える人が多いのです。これが潜在性鉄欠乏症(隠れ貧血)です。これは疾患ではなく「栄養障害」なのです。

慢性的に頭痛を経験している人は40%程度いるようです。その中で医療機関を受診した人は30%にも満たないそうです。その理由は、「我慢できる程度である」、「市販薬で済ませられる」、「すぐに治る」、「医療機関を受診しても根本的には治らない」、「体質なので諦めている」と回答する方がほとんどのようです。たいていは軽微な症状であり、自然に軽快するのでたいした気にせず、場合によっては薬局で市販薬を購入し、服薬するとことで済ませているようです。当院にも、頭痛が強くて辛くて、あるいは頭痛の裏に何かの病気が隠れていないかと心配になって受診する患者様がいらっしゃいます。頭痛にもさまざまあり、MRIでくも膜下出血や脳腫瘍などの器質病変が無いものを一次性頭痛といいます。日本では一次性頭痛の原因の60~70%が緊張型頭痛、20~30%が片頭痛と診断されています。最終的、除外的に緊張型頭痛(精神的ストレスや肩こりなどによる頭頚部筋肉の痛み)と診断するのです。そして、消炎鎮痛剤(痛み止め)、筋弛緩剤、抗不安剤などを処方して、いわゆる対症療法のみで経過観察という流れをとります。恥ずかしながら、以前までの自分は一次性頭痛の患者様への対応は全くこの通りでした(笑)。

では何故、専門医がこのような診察をするのでしょうか?それは一般診療の医師は潜在性鉄欠乏症の認識が乏しいからです。国際頭痛分類(ICHD-3)には、鉄欠乏による頭痛の記載は何度探してもありませんでした。唯一、近いことが書いてあったのは、第2部10.7に「その他のホメオスターシス障害による頭痛」という項目で、そこには「さまざまな全身性疾患および代謝性疾患と頭痛との関係が示されているが、これらの関係について系統的な評価はされておらず、さらに実践的な診断基準を作成するための十分な証拠についても得られていない状況である。」と記載されていました。

健康診断の血液検査では最低限の項目で疾患を探し出すだけなのです。従って、鉄不足を把握できる項目が十分にありません。脳神経外科の医療機関を受診すると、MRIは必ず行いますが、血液検査を行うところはほとんどありません。他科の医療機関を受診して、血液検査をしても医者に潜在性鉄欠乏症の認識が無いために「異常無し」と判断されます。このようなことで埋もれてしまっているのです。

鉄の不足を調べる項目の一つに「フェリチン(貯蔵鉄)」というものがあります。その正常値は、当院が受託している検査センターでは女性の場合、「5.0~157.0ng/mL」となっています。但し、これは疾患をチェックするための基準で、栄養障害の基準ではありません。オーソモレキュラー栄養療法としては「100.0ng/mL以上」を正常と判断いたします。この差が一般診療のみの医師とオーソモレキュラー栄養療法を実践している医師との判断の違いになります。

上の図を見て下さい。体内に鉄は約4g存在します。主なものとして赤血球に存在する「ヘモグロビン(Hb)」が約70%、肝臓、骨髄、脾臓、腸管に存在する「フェリチン」という鉄貯蔵たんぱく質が約25%程度分布しております。例えて言うなら、ヘモグロビンは毎日持ち歩くサイフのようなもので、フェリチンは銀行預金のようなものです。日常生活の中で、お金を使ってサイフの中身が少なくなると、預金を下ろしてサイフの中身を充足しますよね。ところが、銀行預金がどんどんと減ってくるとそんなことも言っていられなくなります。サイフの中身も充足されなくなっていくのです。その状況を病気に例えると貧血といいます。病気としての鉄欠乏性貧血と診断されるのは「Hb<12.0g/dL」です。ところが、「Hb≧12.0g/dL」であっても、フェリチンが「80.0ng/mL」以下である状況は思った以上に様々な症状が起きることが分かっています。この状況を「潜在性鉄欠乏症(隠れ貧血)」と呼ぶのです。鉄欠乏によって起きる症状は多彩ですが、頭痛やふらつきを起こすことが多いようです。

鉄欠乏性貧血という病気として診断されれば鉄の医薬品が処方されることがあります。しかし、保険のルールで、潜在性鉄欠乏症の場合には医薬品が処方できません。そのうちにお話ししますが、医薬品の鉄剤は全て非ヘム鉄で、これには様々な問題があり、鉄の補給には適しておりません。従って、食品や適切なサプリメントで補充することがベターなのです。次の機会にお話ししますが、鉄のサプリメントはしっかりとした知識が無いと過剰投与になり副作用を起こすことがありますので、インターネットで購入する場合は注意が必要です。

特に若い女性の方、以下のチェックシートをやってみてください。当てはまる項目が多い場合はお近くのオーソモレキュラー栄養療法を実践している医療機関を受診することをお勧めします。あなたのその悩みは適切な対処によって解決できるのです!

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