「20円」 脳神経外科おたる港南クリニック

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「20円」

 医療機関が診療の対価としてもらえる「診療報酬」は2年に一度、改定になります。これは国から勝手にお達しが来るものなので、医療機関が独自に決めることができませんし、様々なルールが存在し、それを遵守しなければなりません。
 2026年度の医療報酬改定は、本体改定率がプラス3.09%となり、これは約30年ぶりの高水準となる大型改定と報道されていますが、その中身の大半は「ベースアップ評価料」として、職員賃上げに紐づけられた“目的税”のような財源です。当院の場合、外来受診料のベースアップ評価料は初診で170円、再診で40円の上乗せで、アップしたことによって得た収益は全てを職員のベースアップのためだけにしか使うことができません。つまり、医療機関には1円も入りません。
 一方で今回、昨今の物価高に対応して、「物価対応料」となるものが新設されました。1人1回の外来診察で物価高騰対策としての上乗せが「1人1回の診察あたり20円」。100人を診察して、1日2,000円。もはや書いていて空しくなる水準です。電気代、ガス代、水道料、リネン費、医療材料、検査関連の委託費、さらには機器の保守費やリース料まで、すべて右肩上がりの中で、1日2000円増えて何が守れるのか。冷房を1時間止めろというのか、エレベーターを止めろというのか、というレベルです。昨今は全ての物価が上がり、多いもので50%程度の値上がりをしているものもあります。それが、医療機関では1人1回の診察毎に「20円」ですよ!「物価高に対応しました」という政府のアリバイ作りのために、現場は20円という数字を握りしめて首を絞められている。当院の再診の患者様は「ベースアップ評価料」170円+「物価対応料」20円=190円分の自己負担額(1割負担で19円、3割負担で57円)を多く支払うことになります。そして、医療機関には20円しか入りません。当院は有床診療所なので入院分の物価対応料が上乗せされますが、無床診療所はこの「20円」だけですよ。患者には「値上がりして申し訳ないです」と頭を下げ、裏では「これでどうしろと言うのだ???」と電卓を叩く。このギャップこそが今回改定の本質でしょう。まったくバカバカしい話です。
 北海道でも市立室蘭総合病院が2027年度をもって閉院を決めました。市立病院が経営難で閉院ですよ!赤字になっても市からの支援があるはずなのに、市はこれ以上の負担は市の財政を圧迫し、手に負えないとのことで閉院と決断したようです。こんなことが起こるとは思ったことがありませんでした。全国的にも大学関連病院やその他病院の閉院や経営統合の話を度々、耳にするようになりました。多くの医療機関は経営難です(総務省病院事業決算状況・病院経営分析比較表)。これって、経営手腕が悪いのでしょうか?いいえ、制度上の問題としか言いようがありません。
 少子高齢化がさらに進行し、この先、医療機関は閉院や統廃合などが次々と起きていくと思います。それが国の思惑であるとしか考えようがありません。そして、医療機関の減少が進み、人口の減少により拍車がかかってきます(ブログ:人口急減傾向)
以前、医療機関はどのような景気状況でも安定して収入が得られ、医療機関に勤めることができれば安定であると思われてきました。ところが今はもっとも不安定な業界となってしまいました。医療を安定したビジネスとして、その業界に身を置く人はどんどんと少なくなってしまいます。その結果、皆様方は体調を崩しても十分なケアを受けられなくなる将来はそんなに遠いものではないかもしれません。高尚な志をもって、医療機関の専門職になろうとする若者はどんどんと減っていくでしょう。

外来受診ご希望の方
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