短鎖脂肪酸の抗アレルギー作用 脳神経外科おたる港南クリニック

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短鎖脂肪酸の抗アレルギー作用

 「アレルギー」とは、免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こり、免疫細胞が本来味方である自己の細胞を攻撃することを言います。つまり、アレルギー性疾患は免疫の暴走です。
 その中で、Ⅰ型アレルギーは、即時型アレルギー、アナフィラキシー型とも呼ばれ、皮膚反応では15分から30分で最大に達する発赤・膨疹を特徴とする即時型皮膚反応を示します。Ⅰ型アレルギー反応による代表的疾患にはアレルギー性鼻炎アトピー性皮膚炎アレルギー性結膜炎気管支喘息じんましんアナフィラキシーショックなどがあります。アレルギーの原因物質を「アレルゲン」と言います。

 このメカニズムを詳細に説明します。アレルゲンが体内に侵入してくると、マクロファージがそれらを捕捉し、それによってヘルパーT細胞0型(Th0細胞)が、その異物に対して分化します。アレルゲンであればヘルパーT細胞2型(Th2細胞)に変わります。Th2細胞はサイトカインを放出し、B細胞形質細胞に分化させます。それにより、形質細胞はIgE抗体を産生します。
 肥満細胞は、主にアレルギー反応に関与する免疫細胞です。肥満細胞の表面には、IgE抗体受容体(FcεRI)が発現しています。このIgE抗体受容体にIgE抗体が結合し、さらにアレルゲンが結合し、複数のIgE抗体受容体が連結(架橋)することで肥満細胞が活性化されます。肥満細胞は、細胞内に多くの分泌顆粒をもち、活性化すると分泌顆粒が細胞外に放出される「脱顆粒」と呼ばれる現象が生じ、ヒスタミンなどのアレルギー誘因物質を細胞外に大量に放出することによって、各組織において平滑筋収縮、血管透過性亢進、腺分泌亢進などをきたしアレルギー反応が生じるのです。
 東京理科大学先進工学部生命システム工学科西山千春教授らの研究グループは、短鎖脂肪酸による抗アレルギー作用の分子的メカニズムを明らかにしました。
 それによると以下2つの経路が関与していたとのことです。
① Gタンパク質共役型受容体(GPR109A)を介する経路
② 免疫関連遺伝子のエピジェネティックな発現調節経路(こちらはかなり難しくなりますので詳細は割愛)

 彼らは肥満細胞に対する短鎖脂肪酸の効果を評価しました。肥満細胞の脱顆粒が抑制され、各種サイトカインの放出も減少し、IgE抗体受容体の発現量も減少したことを確認しました。その結果、アレルギーを抑制することがわかりました。
 そこで肥満細胞の細胞膜上に存在する受容体を検索し、短鎖脂肪酸の受容体として「Gタンパク質共役型受容体(GPR109A)」を同定しました。GPR109Aは元々、ナイアシン(ビタミンB3)の受容体で、炎症に関与するプロスタグランジンという生理活性物質の産生を促進することで知られていました。その中で、「プロスタグランジE2」が、複数あるプロスタグランジンE2受容体の中の「EP3」に結合することで、肥満細胞の活性化を抑制し、アレルギーが生じることを抑えることを見出しました。また、プロスタグランジンの合成を阻害するNSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛剤:一般的に使われているロキソプロフェンなど)により、アレルギー抑制効果は阻害されたのです。
 このように、短鎖脂肪酸とナイアシンは肥満細胞の細胞膜上のGPR109Aに結合することで、肥満細胞はプロスタグランジンE2の産生を促進し、それが肥満細胞の細胞膜上にあるプロスタグランジンE2受容体(EP3)に結合することで、肥満細胞の脱顆粒を抑制し、アレルギーを抑制するというメカニズムが解明されたのです。
 別の報告で短鎖脂肪酸は制御性T細胞の活性化により、Th2細胞を抑制することが報告されています。また別の報告では短鎖脂肪酸は抗炎症性サイトカインであるIL-10を増加させ、アレルギー反応を抑制することが報告されています。このように短鎖脂肪酸はいくつかのメカニズムでアレルギー性反応を抑制する機能があることが明らかになりました。
 いやいや、一般の方にはずいぶん難しい話になりましたね(笑)。結論的には以下です。

 アレルギーは皆さんが痛み止めとして汎用しているNSAIDsにより、悪化するということなのですよ。つまり、アレルギーを治療するためには、短鎖脂肪酸を増加させることが重要で、非ステロイド系消炎鎮痛剤はできるだけ使わないようにすることなのです!
 アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギー性疾患に悩まされ、医療機関に通い続けて根本治療ではない対症療法のみを継続している。それに加えて、鉄不足によって、慢性的に頭痛を感じ、脳神経外科を受診してMRIで異常が無いからといって、消炎鎮痛剤で対症療法のみを受け、そのうちに自分でドラッグストアにて消炎鎮痛剤を買い、汎用している若き女性の皆様、これじゃあ、悪いことの上塗りじゃないですか?医者に儲けさせるだけですね。全くバカバカしい!こういうことを医者が知らんし、保険診療では対応できないから仕方ない(笑)。この4年間のコロナ騒動、利権まみれの医療構造から、たくさんのことを教えていただきました。感謝!アレルギー性疾患に悩まされている皆様方のご回復とご健康を心よりお祈り申し上げます!

【Butyrate, Valerate, and Niacin Ameliorate Anaphylaxis by Suppressing IgE-Dependent Mast Cell Activation: Roles of GPR109A, PGE2, and Epigenetic Regulation.】Nagata K.,et al . Journal of immunology. 2024 Mar 01;212(5);771-784. doi: 10.4049/jimmunol.2300188.