疲労を科学する! 脳神経外科おたる港南クリニック

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疲労を科学する!

 一般的に「疲労」という言葉には2つの意味が含まれています。

 まずはこの2つを明確に区別しなければなりません。
*疲労感の中でも気分などの精神的要素が強い場合を「倦怠感」と言います。

『疲労の客観的評価』
 疲労を科学的に評価するためには、疲労を客観的に測定する必要があります。日本疲労学会にはVisual Analogue Scale(VAS)という疲労感を測定する方法があり、個人の疲労感の変化を相対的に評価することができます。しかし、他人との疲労感を比べることはできません。疲労感はその人の主観によって、左右されるからです。そして、疲労感は必ずしも疲労を反映しているとは限らないため、疲労感を測定しても、疲労を測定した事にはならないのです。では、疲労を客観的に定量し、評価するためにはどのすればよいでしょうか?

『唾液中のヘルペスウイルス(HHV-6)の量』
 ヒトヘルペスウイルスには単純ヘルペスウイルスと水痘・帯状疱疹ウイルスがあります。ヒト単純ヘルペスウイルスは9種類あり、このウイルスは子供の頃に一度感染すると何らかの疾患を起こした後にその宿主の一生涯にわたり、体内に潜み続けます(潜伏感染)。そして、何かの刺激が加わると再び増えはじめます(再活性化)。皆さんの中にも、疲れると口唇ヘルペス(ヒト単純ヘルペスウイルス1型/HHV-1)や性器ヘルペス(HHV-2)を経験したことがある方もいらっしゃると思います。子供の頃に水痘に感染した方は加齢とともに帯状疱疹が出現する場合があります。
 本の著者である近藤らは「ヒト単純ヘルペスウイルス6型/HHV-6」に注目しました。このウイルスは赤ちゃんの頃に感染して、「突発性発疹」という疾患を起こした後に潜伏感染を続けます。

 労働時間が長いという疲労によって、HHV-6が再活性化し、唾液中に放出されるHHV-6が増加するという相関関係が認められたのです。これで、疲労を定量することができ、客観的に科学的に分析できる可能性ができました。

【疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた】近藤一博 ブルーバックス:講談社