炎症と疲労分類 脳神経外科おたる港南クリニック

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炎症と疲労分類

 炎症とは、生体が受けるストレス侵襲に対して、その応答により生じる現象です。

 炎症が生じる目的は、炎症を起こす原因となる異物を取り除くためです。炎症は外敵ストレスによって組織破壊が生じた時に起こります。
 サイトカインという物質があります。サイトカインとは細胞から分泌される低分子生理活性タンパク質です。炎症に関わるサイトカインを炎症性サイトカインと言い、炎症性サイトカインは免疫細胞の他に内皮細胞や線維芽細胞などから分泌されます。
炎症が生じて、細胞が炎症性サイトカインを分泌することで、免疫細胞は集められて、外敵を攻撃し、破壊された組織を掃除します。この一連の流れを炎症と言います。
 疲労は大きく2つに大別されます。

『病的疲労』

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CSF)
新型コロナウイルス感染症関連後遺症
うつ病

 2つの疲労は発生機序が異なり、対応の仕方が変わります。従って、まずは明確に区別しなければなりません。疲労感の原因は、生理的疲労も病的疲労も脳が炎症性サイトカインに曝されることです。


 脳には、血流より異物を侵入させないための関所としての「血液脳関門」というのがあります。炎症性サイトカインはこの血液脳関門を通過することができる手形を持っているので、容易に通過することができます。末梢組織の炎症で産生された炎症性サイトカインは血流にのり、血液脳関門を通過して、脳内に入っていきます。これが生理的疲労の原因です。生理的疲労の場合は脳内で炎症は起きていません。外部で生じた炎症により産生された炎症性サイトカインが脳内に侵入してくるだけです。要はトバッチリですね(笑)。つまり、生理的疲労は脳内で戦争は起きていませんが、外で起きている戦争の流れ弾が飛んでくるという状態です。一方、病的疲労は脳内で軍隊が動員されて、軍隊や戦車が戦闘を起こしている状態です。脳の中で炎症が生じることを脳内炎症といいます。その場で産生される炎症性サイトカインにより、病的疲労が生じます。
 すなわち、生理的疲労と病的疲労との違いは外部での戦争で単に流れ弾が脳に届いてきただけなのか、脳内で異物との戦い(脳内炎症)が実際に起きているのか、ということなのです。

【疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた】近藤一博 ブルーバックス:講談社