日本においても、ビタミンD血中濃度とCOVID-19(武漢株)の重症度の関係を示す報告が2022年に神戸市民病院の研究グループにより発表されました。
2020年10月1日~2021年1月31日までに、神戸市民病院に入院した117人のCOVID-19(武漢株)の患者(全員ワクチン非接種、診断前よりビタミンDサプリメントを摂取していた人は除外)について検討しました。
ビタミンD血中濃度の分布は、10 ng/mL未満の重度欠乏は21人(17.9%)、10~20 ng/mLの欠乏は73人(62.4%)、20~30 ng/mLの不足は19人(16.2%)、30ng/mL以上の正常範囲は4人(3.4%)でした。
酸素投与が必要であった感染者の割合と重症化し、人工呼吸器治療あるいは死亡した患者のする割合はビタミンD血中濃度が高くなるほど低いことが明らかにされました。30ng/mL以上の患者では重症化したり、死亡したりする症例は1例も見られませんでした。
東京近郊のビタミンD血中濃度の平均は24.5ng/mLに対して、北海道では30ng/mL以上の人はたったの3.6%で(ブログ:北海道民のビタミンD血中濃度)、平均は18.7ng/mL(東京に比べて76.3%とかなり低い)であることを考慮すれば、ビタミンD血中濃度を30ng/mL以上に維持することはCOVID-19(武漢株)の治療には有効であった可能性があります。
【Association between 25-hydroxyvitamin D levels and COVID-19 severity】Takase T.,et al Clinical nutrition ESPEN. 2022 06;49;256-263. pii: S2405-4577(22)00229-7.
ですが、現在は武漢株が主流ではありません。確かに武漢株は多くの国や地域の人にとっては危険なウイルスであったことに間違いありません。しかし、子供の頃から旧型コロナウイルスに感染を繰り返していた日本人にとってはさほど危険ではありませんでした。ところが、一部の高リスク者にとっては致命的なものになりました。それはその人の免疫力が低下している何かがあったのです。その一つの候補としてビタミンDが低値であったことは考慮するべきと思います。
武漢株はこの世に存在し続けています。ただ、現在は感染力がはるかに強いオミクロン株が主流であるので、影を潜めているだけなのです。ですから、社会的に大流行することは少ないと思われますが、一個人としては武漢株に感染する危険性はゼロではないのです。ビタミンDは新型コロナウイルスばかりでなく、A型インフルエンザや旧型コロナウイルスを含む風邪症候群を引き起こすエンベロープ型ウイルス全般に感染予防効果、重症化予防効果が期待されます。その他にも多彩な効果が期待でき、ほとんどの人が不足していて、有害性が無いビタミンDを充足させておくことにどのような問題があるというのでしょうか?定期的に血中濃度を測定することにより、副作用は100%防止できるのです。だから、コロナ対策だけでなく、健康長寿のために「キープⅮ」なのですよ。