ビタミンDとがんに関する研究は1916 年にホフマンによって、日光への曝露とがんのリスク低下との関連性を発見した最初の報告がされました。彼は 1908 年から 1912 年までのがんによる死亡率を比較し、赤道から離れるにつれてがんによる死亡率が増加したことを観察しました。
【The mortality from cancer throughout the world: Prudential Press; 1916.】Hoffman FL.
1937年、ペラーとスティーブンソンは日光への曝露が増加したことが記録されているアメリカ海軍の海軍隊員のがん発生率を分析し、海軍隊員の皮膚がんの発生率は8倍高かったと報告しました。一方で他のがんによる死亡者は民間人より 60% 少なかったと報告しました。
【Skin Irritation and Cancer in the U. S. Navy.】Peller S, Stephenson CS. Am J Med Sci 1937; 194:326 – 33
4年後、アッパーリーはがん死亡率を同じ集団内で農業に従事しているアメリカ人およびカナダ人の割合を比較しました。南部に住む農民に比べて北東部に住む農民においてがんによる死亡率が高いと結論付けました。彼はまた、より多くの日光にさらされる南部に住んでいる農民は非黒色腫皮膚がんのリスクが高いと報告しました。これら南部の農民が非黒色腫皮膚がんを患っていたという事実により、皮膚がんに対する免疫を獲得し、その結果、死亡率の高いものを含むすべてのがんに対する免疫も得られたと結論しました。
【The Relation of Solar Radiation to Cancer Mortality in North America.】Apperly FL. Cancer Res 1941; 1:191 – 5
これらの観察は注目されることはなく、太陽への曝露量の増加と低緯度での生活ががんによる死亡リスクを減少させるという興味深い関係は文献の中に埋もれていました。そして、約40 年の時間が経過した後にガーランドらが米国における結腸がん死亡率と1日平均日射量との間に強い有意な負の相関があると報告したのです。
【Do sunlight and vitamin D reduce the likelihood of colon cancer?】Garland CF, Garland FC. Int J Epidemiol 1980; 9:227 – 31
ここから、ビタミンDとがんに関する研究が世界中で始まりました。
【Sunlight and Vitamin D: A global perspective for health.】Wacker M & Holick MF. Dermato-endocrinology. 2013 Jan 01;5(1);51-108. doi: 10.4161/derm.24494.
もう一度、(ブログ:北海道におけるがん死亡率)を読んで下さい。日本全体の医療水準には大きな違いが無いのに、北海道や東北におけるがん死亡率は明らかに高いのです。日本ではこの事実を知っている臨床医はどのくらいいるのでしょうか?自分の推定では99%以上の臨床医はビタミンDががんに関係するなどとは頭の片隅にもないでしょう。4年前の自分も全く知りませんでした。過去の自分は保険診療のみの範囲でしか医療を見ることができなかったからです。ある意味、次男の体調不良解決のために出会ったオーソモレキュラー栄養療法、コロナ騒動、これらが自分をこの道に誘導してくれたのです。
日光曝露とがん研究