マグネシウム 脳神経外科おたる港南クリニック

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マグネシウム

 人間の体内に存在するマグネシウムは約25gで、その約50~60%は骨組織に、約25%が筋組織に分布し、残りはその他の組織に存在しています。1日当りのマグネシウム摂取推奨量は成人男性で約370mg/日(成人女性290mg/日)です。しかし、実際の平均摂取量は250mg/日程度(成人女性220mg/日)で、慢性的な摂取不足となっています。マグネシウムは海藻類、豆類、種などに多く含まれていますが、現代の食生活では補うことは難しく、皆さんの人生において、マグネシウム摂取量の不足が加齢と共に累積してきています。これが体調不良や疾患の大きな原因となっています。マグネシウムは生体内で数百以上の酵素の補因子として働き、全ての生体機能の維持に寄与し、細胞の正常な機能を果たすためには不可欠な必須ミネラルなのです。
 代謝を媒介する酵素の中にはリン酸化酵素(キナーゼ)というものがあります。細胞において、あるタンパク質が十分に働くために非活性型のタンパク質を「リン酸化」することで活性型のタンパク質に変換し、それが機能するわけです(プロテインキナーゼ)。キナーゼは「Mg2+(マグネシウムイオン)」を補因子として必要とします。従って、マグネシウムの存在なしに、キナーゼは十分に働いてくれないためタンパク質は十分に活性化せず十分な機能を発揮することができなくなります。このキナーゼは細胞増殖や分裂、アポトーシス(細胞死)、細胞内のシグナル伝達経路に大きな役割を果たしています。もちろん、ダイエットに関連するエネルギー代謝(糖質代謝、脂質代謝)においても重要な役割を果たしています。「若い頃はちょっと節制して、運動すれば痩せることができたのに、年をとったら簡単に痩せることができない!」と思っている人は多いはずです。これが質的栄養失調の一部です。「ビタミンD+マグネシウム」の充足無しには健康長寿もダイエットもあり得ません。

 2017年9月に発表された国立がん研究センターと国立循環器研究センターの多目的コホート研究(JPHC研究)です。
[対象と方法]1995年と1998年に45~74歳だった約8万5,000人を対象にして、マグネシウム摂取量と循環器疾患(脳卒中及び虚血性心疾患)との関連を検討しました。マグネシウム摂取量は、追跡開始時にアンケートを行い、食物摂取頻度調査から推計し、マグネシウム摂取量を、少ない群からQ1~Q5に等分し、摂取量が一番少ない群(Q1)の発症率を基準として、Q2~Q5群における循環器疾患(脳卒中及び虚血性心疾患)発症率を比較検討しました。
[結果]約15年の追跡期間中に、4,110人の脳卒中(脳梗塞及び出血性脳卒中)と、1,283人の虚血性心疾患の発症を確認しました。虚血性心疾患の発症リスクは、男女とも、食事からのマグネシウム摂取量が増えるほど低下する傾向がみられました。一方で脳卒中の発症リスクには関連性を認めませんでした。マグネシウムを食事から多く摂取する人では、他のミネラル(ナトリウム、カルシウム、カリウム)の摂取量も多くなっており、これら他のミネラルの摂取による影響を受けている可能性がありますので、ナトリウム、カルシウム、カリウムの摂取量を統計学的に調整した分析を実施しました。

 男性ではQ1群に比較し、Q4群では多変量調整ハザード比0.70、Q5群では0.66と低下しました。これは統計的に有意差がありました(p<0.05)。女性ではQ3群(摂取量が中間の群)でのみ統計的な有意差を認めました。
[結論]マグネシウム摂取量が一番少ない群に比べ、摂取量が一番多い群の虚血性心疾患の発症リスクが低いという結果になりました。

【Dietary magnesium intake and risk of incident coronary heart disease in men: A prospective cohort study】Kokubo Y.,et.al, Clinical nutrition (Edinburgh, Scotland). 2018 10;37(5);1602-1608. pii: S0261-5614(17)30274-1.

 残念ながら、血液検査でマグネシウムの過不足を判断することはできません。血液中のマグネシウムは全体の約1%程度で、全身にマグネシウムを届けなければならないので、血液の中は相当量の不足が無い限り、一定に保たれており、全体的に過不足は反映されません。従って、研究は血中濃度を用いるのではなく、摂取量を基準にして行われています。様々な統計から、現代日本人のマグネシウム摂取量は不十分で、加齢と共にその不足は累積し続けているという前提で考えなければなりません。
 マグネシウムを多く含む食品は「海藻類、豆類、種」です。これらの食品を多く摂ることを意識して下さい。ただ、それだけではマグネシウムを十分に補給することは難しいため食事以外で補給する方法を何点か記します。

  • 硬水

 水には軟水と硬水があるのはご存じですか?マグネシウムなどのミネラルを多く含むものが硬水です。日本では軟水がほとんどです。軟水にはマグネシウムはほとんど含有されていません。過去に「コントレックスダイエット」というのがブームになったことがあります。モデルさんがこぞって、飲み続けました。この時は自分も知識が無かったので、こんなことで痩せることができるものかと信用しませんでした。実はこれはマグネシウムを多く含む硬水です。今になって科学的な裏付けを得ることができました。ただ硬水は飲みにくいという方が少なからずいらっしゃいます。

  • エプソムソルト

 エプソムソルトという入浴剤があります。マグネシウムを経皮吸収することができ、これだと経口吸収することによって起きやすい副作用としての下痢を回避することができます。おススメです。

  • サプリメント

 「そうか、マグネシウムサプリメントを買いに行こう!」と思っても慌てないでください。一般的に購入できるマグネシウムサプリメントは「酸化マグネシウム」という成分です。これは吸収率が3~4%程度しかなく、他は腸管に排泄されてしまいます。その時に水分を持ち逃げしてしまうので、医療現場では便秘薬として使用されています。つまりマグネシウムの補給には適していないということをご理解ください。サプリメントでの補給を希望される方のために、当院では吸収率を高めるよう工夫されている医療用マグネシウムサプリメントをおススメしております。

医療用マグネシウムサプリメント:1か月分¥5,500(税抜)、¥6,000(税抜)

 ビタミンD+マグネシウムの充足無しに健康長寿もダイエットもあり得ません。マグネシウムは十分に補給され、人体が必要と無くなれば多いものは排泄してくれます。腎機能が悪くない限り、過剰にはなることはありません。今までの人生におけるマグネシウム不足の累積は簡単には改善しません。過剰を恐れるより、上記のあらゆる手段を使って、マグネシウムの補充を心がけて下さい。

 効果的なマグネシウムサプリメントをご希望の方は「サプリメント申込みフォーム」より、ご連絡ください。