ビタミンDの産生と代謝 脳神経外科おたる港南クリニック

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ビタミンDの産生と代謝

「ビタミン」とは、生物の機能を正常に保つために必要な栄養素のうち、生物の体内で合成できない糖質・タンパク質・脂質以外の有機化合物の総称です。

「ビタミンD」はコレステロールを原料とするステロイドホルモンの一種です。ビタミンという名前のせいかその働きが軽視されがちですが、実はステロイドホルモンのように全身の細胞に大きな影響を与えているのです。もう少し強そうで、効果がありそうな名前を付けてもらっていれば、一般の方の認識も変わっていたのではないでしょうか(笑)。

では、ビタミンDはどのようにして、体内で作られていくのでしょうか?下の図を見て下さい。

コレステロールから合成されたプロビタミンD3が、紫外線(UV-B)により皮膚でプレビタミンD3を作ります。プレビタミンD3は体温によってビタミンD3に変化します。体内で産生されるビタミンDは、紫外線由来が80~90%、食事由来が10~20%程度といわれ、大半のビタミンD3紫外線(UV-B)によって皮膚で合成されます。ここで食品やサプリメントから摂取したビタミンD3と一緒になりますが、食品由来のビタミンDは、さらに鮭などの動物性食品に多く含まれるビタミンD3と干ししいたけやキクラゲなどの植物食品に多く含まれているビタミンD2に分かれていて、ビタミンD3とビタミンD2は構造式も少し異なります。

皮膚で紫外線(UV-B)により合成されるビタミンDはビタミンD3であり、ビタミンD2に比べて3~4倍の生理活性(体の調節機能に対して作用する性質のこと)があることが分かっています。従って、食品からはビタミンD2ではなく、ビタミンD3を多くとるようにした方が効果的です(ビタミンD2が体内でビタミンD3に変換されるという説もありますが、今のところまだわかっていません。)。

ビタミンD3は生体にとっては必須の栄養素であるので、多少の飢餓状態になっても生き残れるようにするためにこのような機構が存在するのです。ですから、生体では合成できずに食事からのみしか補給できない他のビタミンとは一線を画しているのです。つまり、ビタミンD3は、当初に述べた本来の意味からいうと「ビタミン」と名付けることは間違いなのです。

このビタミンD3は肝臓に運ばれて、25(OH) ビタミンD3に代謝されます。さらに25(OH) ビタミンD3は腎臓やその他全身の細胞で代謝されて、1,25(OH)2ビタミンD3となります。これが従来言われていた活性型ビタミンD3です。1,25(OH)2ビタミンD3の濃度は内分泌機能により、ほぼ一定の濃度に調整されています。従って、ビタミンDの過不足の指標は「25(OH) ビタミンD3血中濃度」によって行われます。一方、25(OH) ビタミンD3は1,25(OH)2 ビタミンD3の約1,000倍の濃度で存在しています。この25(OH) ビタミンD3は、以前、非活性型であると思われていたのですが、最近になって25(OH) ビタミンD3も活性を有していることがわかってきましたが、1,25(OH)2 ビタミンD3に比べると生理活性は500分の1と弱いのです。現在、医薬品として使われているのは1,25(OH)2 ビタミンD3製剤(あるいは1(OH) ビタミンD3製剤)です。25(OH)ビタミンD3は現在、医薬品として使用されておりませんが、最近になって1,25(OH)2ビタミンD3と25(OH) ビタミンD3が共に作用することでビタミンDの効果を発現していることがわかってきました。つまり、ビタミンD3の効果を十分に発揮するためには医薬品の1,25(OH)2 ビタミンD3製剤のみでは不十分だということです。また、活性の強い1,25(OH)2 ビタミンD3製剤を直接投与することは高カルシウム血症などの副作用の危険性があります。活性の弱い25(OH)ビタミンD3の状態で貯蔵しておいて、必要に応じて、生体の内分泌機能により1,25(OH)2 ビタミンD3に変換してもらうことで安全性が担保されるのです。

自分の目標は全国民がビタミンDをサプリメントで摂取し、その至適血中濃度を維持してもらうこと。こうすれば日本国民の健康度は大幅にアップし、医療費は大きく削減できるであろうと確信しています。

*ビタミンDはコレステロールを原料に体内で合成されます。コレステロールを悪役扱いして、医薬品で過度に低下させることによりビタミンD産生に弊害が生じることも容易に想定されます。

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