活性酸素 脳神経外科おたる港南クリニック

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活性酸素

 「活性酸素」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?今日のお話のテーマとなりますので、まずは活性酸素の説明から始めます。
活性酸素は生体にとって必要不可欠なものであります。こう言うと、活性酸素のことをご存じの方は、様々な疾患を引き起こす原因となるものでは?など、生体にとって悪者、諸悪の根元などというイメージを持つ方が大半であろうと思います。確かに過剰な活性酸素は様々な疾患を引き起こす原因になるのですが、実は活性酸素は身体にとって大切なものであるのです。あえて最初はその方向からお話しします。
 身体の中には「免疫」という外敵と闘ってくれる軍隊が存在します。白血球などの軍人が、細菌などの外敵を捕獲し貪食し、活性酸素で殺菌し、トドメを刺すのです。ウルトラマンで言うと「スペシウム光線」のようなものですね。このように、感染症から守る防御メカニズムに活性酸素は役に立っているのです。この白血球が活性酸素を作り、外敵を処理する力は体温よりやや高い環境が適しているのです。ですから、風邪をひいて発熱することは生体の防御反応なのです。発熱すると辛いですが、むやみに解熱することは必ずしも良いわけではありません。また活性酸素は細胞内の情報伝達に機能していることが明らかになってきています。つまり、活性酸素は生体に必要なものなのです。また放射線療法やある種の抗がん剤療法は活性酸素を大量に発生させて、それによりがん細胞を破壊するという反応を利用しています。
 地球に生命が誕生した頃は地球上には酸素は存在せず、その中で酸素を利用せずに生きていく嫌気性菌という生物のみが存在していました。しかし、光合成ができる生物が出現し、酸素を作れるようになると、地球上の酸素が増加し、それを効率よく利用してエネルギーを産生できる生物が誕生したのです。我々、人間は呼吸することで大量の酸素を体内に取り入れ、細胞内のエネルギー産生工場である「ミトコンドリア」にて、細胞のエネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)を産生しております。その製造過程の中で、酸素の大部分は水に変換されますが、約1~3%は活性酸素に変換されます。このわずかな活性酸素が本来出てきてほしくない不良品かはぐれ者のように扱われているのです。本来は生命維持に必要な活性酸素を計画的に常に作り続けているのかもしれません。
 ではなぜ、活性酸素は悪者扱いされることが多いのでしょうか?必要不可欠な活性酸素は多過ぎると悪さをするからです。活性酸素は反応性が高く、多過ぎると生体内で様々な物質に対して非特異的な化学反応をもたらし、細胞に障害を与えるのです。細胞膜を破壊し、たんぱく質を攻撃すれば、機能不全を起こし、エネルギー産生工場であるミトコンドリアやDNAという遺伝子と反応して細胞を障害するのです。これを「酸化」と言います。そのため、体内のシステムが活性酸素を適量に維持する仕組みを作り上げました。活性酸素を処理して無毒化する抗酸化酵素や抗酸化物質です。このように過剰に発生した活性酸素をうまく利用し、うまくコントロールできた生物のみが進化してきたのです。そのバランスが崩れて、活性酸素が過剰状態になった状態を「酸化ストレス」と言います。様々な疾患の発生にはこの「酸化ストレス」が大きく影響していることが分かってきています。
 活性酸素の発生は、エネルギー産生過程で発生する他に、紫外線や放射線などの外的な要因で発生する場合もあります。身近なところで、皆さんが実感しやすいのは日焼けですね。紫外線は皮膚で活性酸素が発生し、それによりシミやしわになるわけです。女性は強力な日焼け止めを利用して、日焼けを防止し、若々しい肌を保つようにする方が多いのはこのためです。つまり、活性酸素は老化の原因にもなるのです。
 浦島太郎の玉手箱から出てくる煙のようなものですね。いつまでも若々しく健康でいたいと願っている人にとって老化を引き起こす活性酸素は大敵ですね。