ビタミンDとインスリン抵抗性 脳神経外科おたる港南クリニック

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ビタミンDとインスリン抵抗性

 血糖が上昇することで膵臓のβ細胞より血糖降下作用のあるホルモンであるインスリンが発動し、細胞内にブドウ糖を取り込みます。このインスリンが効果的に作用しなくなった状況をインスリン抵抗性といいます。インスリン抵抗性が生じて、血液内のブドウ糖を細胞内に十分に取り込めなくなることで2型糖尿病となります。

 この論文は母体年齢が高い妊婦の妊娠後期におけるビタミンDとインスリン抵抗性の関連性を検討したものです。

【背景】出産前の妊婦80人において、ビタミンD血中濃度:25(OH)VDとインスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRとの関連性を検討した。25(OH)VDが(<20ng/mL)をビタミンD欠乏群、(≧20ng/mL)をビタミンD非欠乏群(不足群+正常群)とした。インスリン抵抗性の指標はHOMA-IRとした。HOMA-IR=(空腹時血糖)x(空腹時インスリン)x1/405で計算した。

【結果】Fig.1(a):ビタミンD血中濃度(25(OH)VD)はインスリン抵抗性(HOMA-IR)と逆相関していた[r=- 0.25,p=0.025]。Fig.1(b):HOMA-IRはビタミンD欠乏群では1.78[95%信頼区間1.07∼4.14, p=0.024] であったが、ビタミンD非欠乏群では1.30[95%信頼区間 0.83∼1.89, p=0.024]であり、HOMA-IRはビタミンD欠乏群ではビタミンD非欠乏群に比較し有意に高値であった。

【結論】母体年齢が高い妊婦の妊娠後期におけるビタミンD血中濃度はインスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRと逆相関することが示唆された。

【The relationship between vitamin D and insulin resistance before delivery in advanced maternal age】Dong B.et al. Reproductive biology and endocrinology : RB&E. 2019 Dec 18;17(1);108. pii: 108.

 つまり、ビタミンD血中濃度の低下が、インスリン抵抗性を引き起こし、2型糖尿病を発症させる一因の可能性があるということです。当院では2年ほど前から栄養療法を実践している67歳男性が、初診時に糖尿病診断の指標であるHbA1c(NGSP)が9.7% (2021.5)と異常高値(正常値は6.0%未満)を示していたため、明らかな糖尿病と診断し、医薬品の投与を開始しました。その後、別の目的でオーソモレキュラー栄養療法を始めました。ビタミンDの他に数種類の栄養素を補給しています。1年後にHbA1c=5.8%(2022.5)とコントロール良好になったので、医薬品を中止しましたが、現在は医薬品の服用無しにHbA1c=5.8(2022.12)と、医薬品を離脱しても糖尿病はコントロールされています。軽度の糖尿病であれば、時間はかかりますが、ビタミンDを含む栄養療法で医薬品の中止ができた症例です。この方は降圧剤も離脱しました。現代の保険診療では糖尿病と診断されれば、血糖を下げるための医薬品を投与し、対症療法をするだけです。ですから根治するわけではありません。オーソモレキュラー栄養療法は疾患の原因の根本にアプローチするので、根治的な治療が可能なのです。重症の糖尿病の方も医薬品の減量が可能かもしれません。糖尿病でお悩みの方、治療の一つとして“ビタミンD”を検討してみることも有益であると思います。というか、こんなデータがあって、糖尿病の患者様がビタミンD血中濃度を低値のままに放置しておく意味がわかりません(笑)。