サーチュイン遺伝子 脳神経外科おたる港南クリニック

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サーチュイン遺伝子

 今回のブログは、長寿遺伝子といわれているサーチュイン遺伝子についてです。
 
 1988年にコロラド大学のジョンソン博士が線虫から長寿ミュータント(遺伝子変異)を世界で初めて発見しました。その後にマサチューセッツ工科大学のガーランテ博士が酵母を用いて、長寿遺伝子Sir1~4遺伝子を発見しました。

 Sir2~4遺伝子の実験で酵母の寿命が、Sir2遺伝子の欠損で約50%短縮、Sir3遺伝子とSir4遺伝子の欠損で約30%短縮しました。Sir2遺伝子の欠損で著しい寿命短縮が認められたのです。

 一方で、Sir2遺伝子を活性化することで寿命は約20%延長しました。その後に線虫、ショウジョウバエにおいてでも、Sir2遺伝子の活性化により寿命延長効果が確認されました。

【The SIR2/3/4 complex and SIR2 alone promote longevity in Saccharomyces cerevisiae by two different mechanisms】Kaeberlein M, McVey M and Guarente L Genes & development. 1999 Oct 01;13(19);2570-80.

 次は哺乳類における検討です。哺乳類ではSir2遺伝子に相当するものを「Sirt1遺伝子」と言います。Sirt1遺伝子により発現されたタンパク質を「SIRT1」と言います。ワシントン大学の今井眞一郎博士(抗老化研究の世界的権威)は、まずはマウスの膵臓のβ細胞において、SIRT1を過剰発現(BESTOマウス)させて検証したところ、そのマウスにおいては耐糖能が高まっている状態になっていましたが、寿命延長効果を認めませんでした。

 そこで、脳にだけSIRT1を過剰発現させた「ブラスト(BRAST)マウス」で検証しました。その結果、中間寿命(健康寿命)が10.9%(メスで16.4%、オスで9.1%)も延長しました。これを人間に当てはめると約10年になります。

 加齢に伴う年齢依存性死亡率、がんによる累計死亡数共にBRASTマウスは、対照マウスに比較してグラフが全体的に右にシフトしており、死亡率低下と老化遅延を示しています。

【Sirt1 extends life span and delays aging in mice through the regulation of Nk2 homeobox 1 in the DMH and LH.】Satoh A.,et.al. Cell metabolism. 2013 Sep 03;18(3);416-30.

 このように酵母、線虫、ハエにおいて、Sirt2遺伝子の活性化により、発現されるSIR2により寿命延長が確認され、そして哺乳類のマウスのSirt1遺伝子の活性化により、脳にSIRT1を発現させることで、寿命延長効果と老化遅延効果が確認されました。今のところサイエンスで証明されているのはここまでです。
 では、サーチュイン遺伝子は長寿のため、具体的に何をしているのでしょうか?私たちのDNAは、私たちが普通に日常生活を送っている中で様々なものに曝露され、気が付かないうちに汚れがついてしまっています(ヒストンタンパクアセチル化)。それが老化の原因となり、様々な疾患を引き起こすことになるのです。サーチュイン遺伝子から作られたタンパク質「SIRT1」はその汚れをクリーニングしてくれるのです(ヒストンタンパク脱アセチル化)。現在、哺乳類では7つのサーチュイン遺伝子(Sirt1~7)が確認されています。それらは細胞内局在も異なり、役割も異なるようです。今後、更に多くのことがわかってくれば、老化遅延や寿命を大きく変える可能性が出てきました。秦の「始皇帝」が追い求めてきた「不老長寿」の方法が科学的に明らかになりつつあります。何とポテンシャルの高い分野なのでしょうか。

【開かれたパンドラの箱 老化・寿命研究の最前線】今井眞一郎 朝日新聞出版

 さて、これが人間だとどうなるのでしょうか?寿命の短いマウスと違って、人間の老化遅延効果と寿命延長効果を証明するには、今から始めたとしても数十年の観察期間が必要になってきます。それを確認してからやろうではせっかく寿命延長&抗老化を期待できる手段を見つけたのにもったいないですね。
 では、このサーチュイン遺伝子を活性化するためには、どうすればいいのでしょうか?
最も簡単にできることは「ファスティング(断食)」です。しかし、もっと手軽にできることはないかと思いますよね。サーチュインを活性化させるサプリメントがあるのです!
現在サーチュインブースターと言われているサプリメントは3つです。
  ①レスベラトロール
  ②NMN
  ③5-デアザフラビン
 2015年にNHKスペシャル「ネクストワールド 私たちの未来」(NHK総合)でNMNが取り上げられて話題になりました。そんなわけで、見込み発進しているのが、今のブームなのです。