ビタミンD血中濃度の低下がインスリン抵抗性を引き起こし、2型糖尿病を発症させる一因である可能性は前項(ブログ:ビタミンDとインスリン抵抗性)でお話ししました。では本当にビタミンD血中濃度が低下することにより2型糖尿病を発症するリスクは高くなるのでしょうか?
韓国での研究で、ビタミンD血中濃度の違いにより、糖尿病の発症率を検討した論文があります。
[方法] 1997年~1999年にかけて受診した903人の健常者(平均年齢74歳)を対象に2009年まで糖尿病の発症の有無を追跡しました。ビタミンD血中濃度は30ng/ml未満、30ng/ml以上50ng/ml未満、50ng/ml以上の3つのグループに分け、それぞれ、糖尿病の発症率を比較しました。
[結果]観察期間中に47名の新規糖尿病発症患者、337名の糖尿病予備群患者が見つかりました。新規に糖尿病を発症した患者のうち、30ng/ml未満の群は1331人中13人でした。これを各グループのハザード比(Hazard Ratio:HR)の基準としました。30ng/ml以上40ng/ml未満では3,401人中13人が発症し、HR=0.31[95%信頼区間0.14-0.70]、同様に40ng/ml以上50ng/ml未満では3,465人中14人が発症し、HR=0.29[95%信頼区間0.12-0.68]、50ng/ml以上では2,199人中6人が発症し、HR=0.19[95%信頼区間0.06-0.56]となりました。このようにビタミンD血中濃度を50ng/mL以上を維持することで新規糖尿病の発症率が30ng/ml未満の群に比較して、約5分の1に低下するという結果になりました。
ビタミンD血中濃度が10ng/ml高くなるごとにハザード比は0.64[95%信頼区間 0.48-0.86]低下しました。つまり、ビタミンD血中濃度が高くなるほど新規糖尿病は発症しにくいということです。
ビタミンD血中濃度を50ng/ml以上を維持することによって、30ng/ml未満に比べて、新規糖尿病の発症率が大幅に低下するという結果になりました。一方、糖尿病予備群では新規糖尿病発症群に比較すると弱いですが、同様に逆相関をしましましたが、その傾向は有意ではありませんでした。
【Plasma 25-hydroxyvitamin D concentration and risk of type 2 diabetes and pre-diabetes:12-year cohort study】Park.SK.,et al PloS one. 2018;13(4);e0193070. pii: e0193070.
やはり、ビタミンD血中濃度を適正値に維持しておくことは2型糖尿病の発症率も下げるようですね。将来、2型糖尿病の発症を回避するための一つの方法として、ビタミンD血中濃度を高めておくということは期待がもてます。