脂肪細胞 脳神経外科おたる港南クリニック

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脂肪細胞

 脂肪細胞とは、細胞質内に脂肪滴を有する細胞のことで、白色脂肪細胞ベージュ脂肪細胞褐色脂肪細胞の3つに分類されます。以前は白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の2つでしたが、最近になって、「ベージュ脂肪細胞」の存在が明らかになり、抗肥満効果に関与する可能性があり、注目されつつあります。

 これらの脂肪細胞を知る上で必要なことは、機能によって、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の二つに分けることです。白色脂肪細胞にはエネルギーの貯蔵と放出をする働きがあります。白色脂肪細胞は一般的に脂肪と言われていて、全身の皮下と内臓周囲に存在し、存在する部位によって「皮下脂肪」、「内臓脂肪」に分かれています。もっとわかりやすく言えば、皆さんがダイエットで敵視するそのお腹周りに存在する脂肪です。一方で褐色脂肪細胞はエネルギー消費と熱産生の働きがあります。これは後頚部肩甲骨間腋窩周辺にのみにしか存在しません。以前より、この細胞は加齢とともに減少し、この細胞の働きが肥満に関していると言われています。
 では次に、この細胞の解剖生理学的な特徴を見てみましょう。2つの脂肪細胞には「脂肪滴」という脂肪の貯蔵庫が存在します。白色脂肪細胞の脂肪滴は大きな単房性です。一方で、褐色脂肪細胞の脂肪滴は小さな多房性です。エネルギー消費と熱産生を行う褐色脂肪細胞は当然ながらミトコンドリアを豊富に存在しています。ミトコンドリア内膜には脱共役タンパク質(Uncoupling Protein 1:UCP1)が豊富に存在し、これにより熱が産生されます。

 白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞は細胞起源が違います。白色脂肪細胞は間葉系幹細胞よりMyogenic factor 5(Myf5)陰性前駆脂肪細胞へ分化し、その後に白色脂肪細胞に分化します。一方で間葉系幹細胞からMyf5陽性前駆筋細胞へと分化した細胞は、その後に褐色脂肪細胞と筋細胞に分化します。つまり、褐色脂肪細胞は脂肪細胞というものの筋細胞と起源が同じなのです。
最近になって、二つの脂肪細胞とは異なる「ベージュ脂肪細胞」という脂肪細胞が発見され、注目されてきています。ベージュ脂肪細胞は解剖生理的には褐色脂肪細胞に近く、エネルギー消費と熱産生の機能を有しています。しかし、この細胞起源は白色脂肪細胞と同じで、Myogenic factor 5(Myf5)陰性前駆脂肪細胞で、一部はそこから直接ベージュ脂肪細胞に分化するものもありますが、寒冷刺激や運動により、白色脂肪細胞であったものがベージュ脂肪細胞に変化します。運動することで筋肉からFNDC5と呼ばれるマイオカイン(骨格筋から分泌されるホルモン)が分泌され、それが分解され、アイリシンとなります。アイリシンが白色脂肪細胞上のアイリシン受容体に結合することでベージュ脂肪細胞に変化するとのことです。合理的なダイエットをするなら水泳や寒風摩擦で白色脂肪細胞をベージュ脂肪細胞に変化させることですね。動物実験ではカプサイシン(トウガラシ)、オーレユーロペン(オリーブ葉抽出液)、EPA&DHAフコキサンチン(海藻)、アルテピリン(プロポリス)、クルクミンフェルラ酸などの栄養素でもベージュ脂肪細胞が増加することがわかっています。このように白色脂肪細胞や褐色脂肪細胞はそのままある常存タイプですが、ベージュ脂肪細胞は刺激により白色脂肪細胞から変化する誘導タイプです。白色脂肪細胞の寿命は約10年ですが、ベージュ脂肪細胞は生成後約20日間で90%が消失します。
 白色脂肪細胞を何とかベージュ脂肪細胞に変換し、それを持続させることが抗肥満戦略になりそうですね。